投手陣は大瀬良の復活が最大のポイント
2021年がスタートした。16~18年の3連覇から、19、20年と2年連続Bクラスに沈んだ広島にとっては、佐々岡真司監督の2年目で巻き返しをかけるシーズンになるが、今回のコラムは新年1回目でもあるので、若干夢見がちに?カープ優勝への条件を考えてみたい。
まずはチームの基軸となる先発陣だが、優勝するためには、中心となる投手2、3人は、しっかりと貯金をつくれる形が必要だ。ここを担える可能性がある投手を挙げるとすれば、昨年、10勝3敗と7つの貯金をつくった森下暢仁、昨年、初めて規定投球回に到達した九里亜蓮、そして、昨年9月の右ヒジ手術からの復活を目指すエースの大瀬良大地だろう。この3人は、打線が昨年ぐらい打ってくれればある程度貯金をつくれる力があるはず。「2年目のジンクス」に挑むことになる森下、九里はキャリアハイの翌年、大瀬良は手術明けと、それぞれにハードルはあるが、中でも大瀬良の復活が最大のポイントになりそうだ。
先発3人目までがそれぞれ5個前後の貯金が稼げれば、4、5人目あたりは五分か少し貯金がつくれれば計算が成り立つ。そうなれば、去年は5勝に終わったが、1年間先発ローテーションを守った遠藤淳志にとっても課題の立ち上がりを克服すれば十分手が届く成績になるし、右腕が中心になるであろう先発陣にあって左腕エースの立場が期待される床田寛樹にも十分期待できる数字だ。そして残る先発枠を、ドラフト1位の栗林良吏、新外国人のネバラスカス、昨年10月に血栓症の手術を受けて復活を目指す野村祐輔、昨秋の宮崎フェニックス・リーグで好投を見せた高橋昂也や矢崎拓也の中から誰かが担う、という形になってほしいところだ。栗林の適性はキャンプ以降に見定めていくことになるが、先発陣がしっかり固まって栗林をリリーフに回してもOK、という形になればチームにとっては理想的だろう。
リリーフは、昨季は後半戦になってケムナ誠、塹江敦哉、フランスアの形で固まったが、ケムナと塹江は今季が実質2年目でもあり、勝ちパターンが毎度このリレーでは1年間持たせるのは難しいだろう。島内颯太郎がいっそうの成長を見せるか、栗林、森浦大輔、大道温貴のルーキー陣から勝ちパターンに使えるピッチャーが出てくることがVへの条件だ。
3つある打撃陣のカギ
打線では、主砲・鈴木誠也が例年どおりの成績を挙げることは前提として、カギは大きく3つある。第1の条件は、昨年11月に右足首を手術した西川龍馬の復活だ。優勝のためには鈴木誠以外にリーグ上位を争うぐらいの成績を残す選手が必要で、そのポテンシャルを秘めるのはやはり天才的打撃を持つ西川。手術後なのでフル出場は難しいかもしれないが、規定打席に到達するぐらいの出場は必須になるだろう。
第2の条件は、昨年固まらなかった一番打者の固定だ。レフトを守る選手が打つのがチームとしては一番形がいいが、長野久義に長期間、一番を期待するのはどうかというところもあり、昨年経験を積んだ大盛穂、宇草孔基(昨年10月に右足を手術)のいずれかが出塁率を上げて定着してくれることが望ましい。あるいは田中広輔が昨年後半ぐらいの打撃と、全盛時に近い足を見せてくれて定着するか。そして第3の条件が、19年に3Aで本塁打王を取ったという新外国人クロンの活躍だ。今季は攻撃陣における大きな補強はクロンのみといってよく、ここがもしハズレならば、昨年からの大きな上積みはないということになる。
あとは、少し目に見えにくいところだが、菊池涼介や田中広に休養を与えたときに戦力が落ちないようなセカンド、ショートのサブもほしい。好守がウリのルーキー・矢野雅哉を補強したが、小園海斗にも今季は出てきてもらいたい。さらに、河田雄祐ヘッドコーチの就任で、伝統の足を使った攻撃への意識が上がり、接戦をモノにできるケースが2つでも、3つでも増えてきてくれれば、というところだろうか。
こうしてみると、昨年手術をした選手の復帰頼み、という部分も少なくなく、そろってもらわないといけない条件は多いが、周囲の状況を見渡してみれば、もしも菅野智之がメジャー流出となった場合には、昨年チャンピオンの巨人と、またその巨人にFA補強で主力選手を引き抜かれたDeNAの戦力低下は必至。今季のセ・リーグは一気にダンゴレースの様相を呈するのは間違いないだけに、5位からの巻き返しでV戦線へ躍り出ることも、広島にとってチャンスのない話ではないだろう。(文:藤本泰祐、写真:BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)