“心臓に毛の生えた男”というのはまさに広島の栗林(栗林良吏)のことを言うのではないかと思いますね。5月4日の巨人戦(マツダ広島)で、新人デビュー初登板から14試合連続無失点の新人新記録を作りました。まさにあっぱれです。
栗林もすごいですが、彼をクローザーに指名した佐々岡(佐々岡真司)監督もさらにすごいと思います。助っ人の活躍よりも予想しづらく未知数なのが新人。即戦力と言われても、なかなか起用するほうも難しいのです。しかも試合の最後をまとめるポジションにそういう選手を送り出すというのは……。私にはなかなか決断しにくい部分ですね。
佐々岡監督に電話取材をしたときに「戦力的に厳しいよな」という話を振ったんです。そのときには「若い選手をたくさん起用するので楽しみです」ということを言っていました。
大したものだなあ、と感心しましたが、実際にクローザーに栗林を起用し、セットアッパー、中継ぎに大道(大道温貴)、森浦(森浦大輔)という若手を大抜てき。捕手もまだ早いかなと思う石原(石原貴規)や坂倉(坂倉将吾)を起用しています。開幕から勝ちにこだわるなら、會澤(會澤翼)を固定すべきですし、そうするはず。それをしないということは、何も恐れることなくチームを変革していく気持ちが強いのだと思います。
さて話は栗林に戻りますが、彼の一番イイモノは、やはり度胸です。投げっぷりがいい。8回までの流れをすべて壊すかもしれないクローザーという場所で登板するということは、並大抵のメンタルの強さでは務まりません。それを平気でやっている。多分、自分のことをよく分析していて、ストレスがかからない方法などを持っているのかもしれません。普通の新人ならとっくにつぶれているでしょうね。
二番目にイイモノは、どの球種もストライクゾーンに投げ込めるところです。真っすぐは最速で149キロくらいですごく速いほうではないですよね。それでも記録を作った時点で13・50の奪三振率に被安打が14試合でたったの3のみ。フォークもカットボールも素晴らしいキレがありますが、それ以上に全球種をストライクゾーンに投げるため、どうしても打者は手が出てしまうんです。
だからこそ、今回の記録更新は必然だったのです。シーズン中、打たれることが必ず出てきます。そこでどれだけ早く自分で立ち直れるか、そこをクリアすればとんでもないクローザーに変貌を遂げる可能性がすごく高いです。今後がすごく楽しみですね。
(※引用元 週刊ベースボール)