「最下位争いは来シーズンの夢をみるか?」
現在Bクラスチームのファンの皆様。こんにちは。繰り返すように最下位争いの話です。おかしいなあ、抜け出てるはずだったのに……この世界の片隅におるままじゃ。
判官びいきという言葉がある。
ひとは弱いものを応援してしまうものらしい。なるほど。
私は高校野球ではどこの地域かまったく関係なく負けている高校に思いを寄せて応援してしまう。勝ち負け逆転したらくるりと気持ちも逆転する。ビハインドのほう頑張りぃ、と。負けているチームの逆転を、逆転したらまたその逆転を祈ってしまう。そんな願いが叶い続けたら永遠に終わらない試合になってしまうわけだが寄り添うのはどうしてもいま負けている側だ。
が、しかし。プロ野球となると違う。弱いから応援しているのではない、応援しているチームが(いま現在は)弱いのだ(血涙)。最下位を応援せねばと推しチーム変はしない。強い弱いの前に球団を好きになるのが先ですもんね。
カープ女子が流行語になった年に何故カープなのかと分析をされた。広島に縁もゆかりもない人たちがどうしてカープファンになるのかと。優勝から遠ざかっている弱いカープ、Aクラスすら遠い球団に自分を重ね、それでも頑張っている姿に感情移入してしまうという意見が多かった。まっこと判官びいきであることよ。
拙作「球場ラヴァーズ」という漫画を描いた時も「弱いからドラマになるんですよね」と何度も言われた。びんぼー球団だから、とか。常勝球団では強い自慢にしかならなかった? そうかなあ、そうかもなあ。
とっかかりが判官びいきでも、好きになったら強い時も弱い時も健やかなる時も病める時もスローガンがすべってても一緒にいることを誓う。心はいつも球場じゃけぇ。
最下位争いのチームは来シーズンの夢をみるしかないのか
さて、今シーズンのAクラスとBクラスの間に流れる深い河はどないしましょう。意識だけでも越えたいのですが。あまりに深すぎて底の見えぬゲーム差をただぼんやり眺めてしまう時がありますね。
ひとはあまりにあまりな状況に陥るとつい「今シーズンはもう無理だから」と自分の中で現シーズン終了させてしまいがち。はやく仕切り直して安仁屋算を始めたい、次こそ優勝だ!と。あの選手も怪我から復帰するし不調のあの選手も復活するしと希望をつなぐ。来年に。
それでも以前の低迷期とは今年は違う気がするんですよ、毎年言ってるけど、今年はほんとに。こんなに若手が出てきた年はあっただろうか、いや、ない。
ドラフト1位で入団したものの脚のはやさだけしか期待されていなかった野間選手がなんと打ち始めた時、同じカープファンのデザイナーさんが「野間が打つ世界線にいるなんて」とまったくほめていないような喜び方をしたのを覚えている。それだ。堂林選手が活躍した去年も思ったのだ、ああ、この世界線にきたぞ。
「黒田が新井が戻ってこなかった世界線」「FAであの選手この選手が出て行かなかった世界線」「マエケンがいるときに優勝する世界線」「男前田が怪我をしなかった世界線」もどこかにあるのかもしれないなあ、と想像するけどもしあっても現在のカープはきっといまの形しかない気がする。最下位争いをしている今シーズンのカープしか。
目の前の試合内世界線に選手と一緒にいさせて欲しい
今シーズンにけりをつけずに来シーズンの世界線に行きたいわけではない。来年の期待はあるけど今シーズンの最下位を争っている世界もちゃんと観ておきたい。しんどいけども。菊池が華麗な守備で魅せ打撃も好調、誠也が6試合連続ホームランを打ち、栗林がルーキーでありながらクローザーを完璧につとめ、森浦が島内が正隋が玉村が石原が試合に出て、小園が復活し、コロナ禍五輪での侍ジャパンに4人が選ばれ金をとりシーズンに戻ってきた世界線。え、なんで5位なん。
判官びいきなので怪我から病気から復活した選手が好きだ。他球団でも。あの選手がこの選手が怪我をしなかった世界線もあるんじゃないかといつもせつなく思うのだが、ド不調の選手含めそれぞれが復活した世界線はある。絶対。祈るだけしかできないもどかしさと共に。
応援ってそういうことだ。愛に見返りはないというけども応援には選手から貰うものがたくさんある。投げた打った捕った勝ったの喜びを勝手に共有しちゃって申し訳ない。選手が思うとる以上に愛しとるで。最下位争う順位でも野球が観たいんじゃー。
最下位争いの応援に疲れ今シーズンをあきらめ来シーズン世界線に意識が飛びそうになった時に今シーズン初のサヨナラ勝ちなんてしちゃって現世界軸に引き戻してくれる選手たち。飴もろた。
選手はいましかみてない。
最下位争いのチームは来シーズンの夢をみるしかないのか。
来シーズンの夢 も みるが正解。
炭酸が苦手な私が球場と映画館でだけ飲むコーラを自宅のテレビ前にて飲む今年、スタイルはかわっても応援はかわりませんとも。
目の前の試合内世界線に選手と一緒にいさせて欲しい。
9月現在、Aクラスをあきらめてない。深い河を越えた先が観たいなあ。
(※引用元 文春オンライン)