新型コロナウイルス感染拡大の第6波が来る前の昨年12月中旬。広島・白浜裕太捕手(36)は、広陵高野球部の中井哲之監督(59)に1年の報告をするため、広島市内の広陵高グラウンドに出向いた。
「野球選手としての白浜ではなくて、人間性を評価をしてもらえるような人になりなさい」
恩師からの激励の言葉を白浜は「中井先生からしたらプロ野球選手でも会社員でも同じ卒業生。野球選手は勘違いしやすい。僕の周りに言ってくれる人はいない」と感謝の気持ちで受け止めた。2004年にドラフト1位で広島に入団後1軍での出場数は通算86試合にとどまるが、「ナカイの教え」を守って、厳しいプロの世界で生き抜いてきた。
野球の技術だけではなく人間力も磨いた白浜は、今季で石原慶幸(20年に引退)と並び球団捕手最長の19年目を迎える。03年春の甲子園でバッテリーを組み、全国制覇を達成した西村健太朗(元巨人)は18年に現役を引退。先輩や同級生がユニホームを脱ぐ中で現役として今年もグラウンドに立つ。
「19年やっているからといって余裕はない。不安しかない」。そう語る白浜は、マツダスタジアムでの自主トレで午前10時から午後4時ごろまで時間をかけて鍛錬する。打撃練習、ウエートトレなどの通常のメニューのあと、個別で捕球練習を1時間。球場を出る時間はマツダ自主トレ組でいつも一番最後になるが、「捕球が上手な人はやらなくてもいいんですけど僕はヘタクソだから」と笑う。
「個人としての目標は白浜がいて良かったと思ってもらえる試合を1試合でも多くしたい。毎年終わりだと思ってやっている。野球を一生懸命やるだけ」
昨季、日本ハム・鶴岡慎也が19年目の現役生活に幕を下ろし、白浜がプロ在籍年数で現役捕手のトップになった。華やかな野球人生ではないが、真面目ひと筋。今季も「ナカイの教え」を胸にチームを支える。(柏村翔)
(※引用元 サンケイスポーツ)