新任コーチの〝優しいノック〟が若鯉に人気を博している。春季キャンプの地、宮崎・日南市の天福球場。居残り特守でノッカーを務める小窪哲也内野守備走塁コーチ(36)は珍しいかけ声をかける。
「息が整ってからでいいぞ!!」
プロ野球のキャンプの風物詩といえば、コーチの厳しいノックに選手が食らいつき、ユニホームが泥だらけになる派手な練習を思い浮かべる。しかし小窪流は逆をいく。緩いノックで、正しい姿勢で捕球と送球を繰り返す地道な練習を繰り返す。
21歳の小園は「新しいですね。特守といえば数を受ける印象がある。ひとつひとつ丁寧に教えていただいている。大きな成長につながるように頑張りたい」と感謝する。同じく21歳の羽月は「すごく新鮮です。4年目にして初めてのスタイルで、今までと違った良さがある。自分がどのようなプレーをするべきか気付くことができる」と続けた。
小窪コーチ自身は「初めてなので、何が正解かはわからないですけど」と前置きした上で「僕的には考えてやってほしい。こっちが『やれ』といって要求をするのではなく、選手の考えも聞きたい。お互いの意見をぶつけ合って〝摩擦〟を起こしたいと思っている」と意図を説明する。
厳しい現役時代を過ごした。PL学園高、青学大を経て2008年に大・社ドラフト3巡目で広島に入団。16、17年には選手会長を務め、リーグ3連覇(16~18年)に貢献した。20年オフに指導者転身の打診を断り、退団。九州アジアリーグの火の国(熊本)、ロッテでのプレーを経て、2年ぶりに広島に復帰した。
「僕の経験上、あまりに要求が多すぎると迷いが生じる。新人は違うでしょうけど、プロでやってきた選手ですからね」
チームの失策数は昨季リーグでは阪神に次ぎ2番目に多い「80」で、4位に沈んだ一因だった。高校、大学で主将、広島では選手会長として個性派をまとめた新米コーチが、早くも新しい風を吹き込んでいる。(柏村翔)
(※引用元 サンケイスポーツ)