ポスティングシステムでのメジャー挑戦を目指している広島・鈴木誠也の去就について、日本時間15日未明に情報が錯綜した。きっかけは日刊スポーツの報道だった。「鈴木誠也5年80億円超パドレスと基本合意、日本人野手最高額 争奪戦の末ダルビッシュとタッグ」との見出しで、鈴木の移籍先がパドレスに決まったと報じた。
2024年の3年目オフに鈴木サイドの意志で契約解除できる条項が含まれているなど、契約の中身についても詳細でこれが事実であるならば、契約の正式発表前という点からみても球団かエージェントサイド、もしくはマネジメントサイドなど内部関係者からのリークであることは疑いようがなかった。
日本の深夜に発されたこのスクープは、デイタイムであった米国で大きな波紋を広げた。すぐに英語翻訳され、米国のまとめサイトなどが転載。SNS上で取り扱われ、パドレスのファンは歓喜した。他球団のファンからは悲鳴がとびかった。
そんな中、その2時間後にはロサンゼルス・タイムズの名物記者が打ち消した。ディラン・ヘルナンデス記者が「鈴木誠也はまだチームを選んでいないと聞かされた。6、7球団がまだ選択肢の中にある」とツイートしたのである。そして3時間後には鈴木自身が「まだ何も決まってないので皆さん記事は信じないでください。もーーー困るなぁ」ツイート。
涙を流す顔文字付きで日刊スポーツの報道を否定し、ファンへ訴えた。インスタグラムのストーリーズでは眉をつり上げて怒った表情となった得意の変顔をつくり、英語で移籍先をパドレスに決断したという報道を否定したのだった。
さらに大手スポーツ情報サイト「ジ・アスレチック」のサハデフ・シャラマ記者はその2時間後、鈴木が米国時間14日の夜にカブスと交渉する確認が取れたと報じた。さすがにパドレスと合意していたのであれば、その後に他球団と交渉することは考えられない。
今後、カブスや他球団との交渉が終わり、最終的にパドレスに入団する可能性は十分に残されている。ただし、この時点で、日刊スポーツの基本合意という初報は完全な誤報に終わったと言っていいだろう。SNS上では一連の流れを受けて「フェイクニュースに気を付けろ」と注意喚起が飛び交った。
フェイクニュースという言葉の意味は別として、パドレスが鈴木の移籍先の有力候補であることは間違いないだろう。報じられた契約内容も、実際のオファーと大差ないものなのかもしれない。そしてそれ以上に、日本の報道機関の報道が瞬く間に米国でも広く伝わり、SNS上で多くの米国ファンにも共有され、即座に伝播することが時代の変化を大きく感じさせた。
過去にも野球、サッカーなど種目を問わず、大物選手の海外移籍ではこうした「飛ばし記事」と言われる誤報は相当数あったと思われるが、このような反応を瞬時に生むことはなかった。
SNS時代での報道のスタイルの変化と同時に、鈴木に対する米国での注目度の高さも改めて示された。パドレスなのか、カブスなのか、それとも他の球団になるのか、もうしばらくは交渉の推移を見守るしかないが、新天地が正式決定した際にはその注目度にふさわしい大活躍をみせてもらいたい。
(※引用元 CoCoKARA)