黒原と吉川尚の〝懸け橋〟になった。5月某日。広島・床田寛樹投手(27)が2軍再調整中のドラフト1位・黒原(関学大)に送ったメッセージの一端を明かした。
「吉川(尚)が『気にすんな』って言っているから頑張れよ!!」
発端は5月4日の巨人戦(マツダ)だった。八回2死三塁で黒原の投じた抜け球が、吉川尚の左肩付近に直撃。ぼう然とする黒原。その場で倒れ込んだ吉川尚は担架で運び出され、交代した。黒原は翌5日、吉川尚は6日にそれぞれ出場選手登録抹消。巨人の正二塁手の離脱に、双方のファンがSNSで争う事態になったが、当事者は冷静だった。
床田がスマートフォンのLINEで「大丈夫か?」と死球を受けた吉川尚にお見舞いのメッセージを送った。「今のところは大丈夫」と返信があった後に「黒原に(SNSなどに批判が来ている可能性があるけど)『気にすんな』って言っておいて」と逆に新人を気遣う言葉も届いた。
床田は、黒原と連絡を取り「(吉川尚が)こうこう言っているから」と間を取り持った。黒原は明らかに動揺があっただけに、吉川尚のスポーツマンシップには頭が下がる思いだ。
床田と吉川尚は岐阜学生リーグ時代から続くライバル関係で、中京学院大のエースだった床田と中部学院大の遊撃手だった吉川尚は幾度となく対戦してきた。床田は「打撃も守備もすごかったですよ。よく打たれましたね」と振り返るほどだ。
2人は2017年にプロ入り。床田は同年に左肘のトミー・ジョン手術を受け、吉川尚は度重なる故障でともに苦労してきた。それでも、プロ6年目の今季は床田が10試合に登板して5勝3敗、防御率2・55。吉川尚も5月17日に1軍復帰すると、6月5日時点で打率・299、2本塁打、12打点と奮闘している。
床田は「アイツ(吉川尚)が(黒原に気にするなと)言ってくれた」と旧友の優しさに感謝した。いつの日か黒原が巨人戦で登板するときは、両軍のファンから温かい拍手が起こることを願っている。(柏村翔)
(※引用元 サンケイスポーツ)