広島、独立L高知を経て鷹に育成入団、開幕直前に支配下となった
ソフトバンクの藤井皓哉投手が今季31登板、4勝無敗9ホールド、防御率0.55と圧倒的な成績を残している。2020年まで広島に在籍し、独立リーグを経て育成選手としてNPBに復帰し、開幕直前に支配下に返り咲いた26歳の波乱万丈の球歴を紹介。また、広島時代と現在に共通する長所と、進化を遂げた部分について掘り下げる。(数字は7月30日現在)
藤井はおかやま山陽高校から2014年ドラフト4位で広島に入団。3年目の2017年に1軍初登板を果たす。続く18年は8試合に登板してプロ初勝利もマークしたが、1軍登板なしに終わった2020年オフに戦力外通告を受け1度はNPBから離れた。昨年は独立リーグ・四国アイランドリーグplus「高知ファイティングドッグス」でプレー。11勝3敗、防御率1.12をマークして最優秀防御率、最多奪三振の2冠に輝いた。5月9日にはソフトバンクの3軍相手にノーヒットノーランを達成した。
その活躍が認められ、2021年オフに育成選手としてソフトバンクと契約。オープン戦の5試合で防御率1.50、6イニングで10奪三振をマークして3月22日に支配下契約を勝ち取った。開幕を1軍で迎え、その後もブルペンの一角として活躍。3月27日から6月8日まで21試合連続無失点の快投を続けた。
藤井の持ち味は圧倒的な奪三振率。広島時代の2018年と2019年にいずれも11を超える奪三振率を記録。今季のそれは13.50という驚異的な領域に達している。一方で与四球率は高く、2019年は6回1/3で9四球だった。2018年と2019年は被打率も高く、1イニングごとに出した走者の平均値を示す「WHIP」も、2018年は1.84、2019年は3.47という高い数字だった。
今季は与四球率が3.31と依然としてやや高くはあるが、奪三振を四球で割って求める、制球力を示す指標の「K/BB」も4.08と、優秀とされる水準の3.50を上回っている。被打率も今季は.078の高水準だ。WHIPも0.63と優秀で、高い奪三振能力を維持しながら、大きな2つの課題を克服しつつあることがうかがえる。
制球力が向上、ボールゾーン低めの球が増えた
続いて、広島時代の2018年と2019年、そして今季の球種別被打率と結果球の割合を比較する。2018年は速球とフォークの割合に大きな差がなく、時折スライダーも交えていた。この年は直球の被打率が.214と比較的低い一方で、フォークとスライダーはどちらも被打率.375以上と課題を残した。
2019年は直球の割合が65%近くまで増加し、代わりにフォークが前年の半分近くまで減った。同年は変化球の被打率がさらに悪化しただけでなく、速球も被打率.412と打ち込まれた。今季、6月までの被打率は直球が.067、フォークが.097を記録。スライダーも.118と非常に低い。割合に目を向けると、今季は速球の割合が5割を少し超す程度、フォークが約30%、スライダーの割合が18.7%まで増えており、各球種の質が向上したことで、配球面でもよりバランスが取れつつあるようだ。
広島時代の3シーズン(2017-2019年)の合算と、今年6月までの投球コースを比較すると、どちらも右打者の外角から低めに行くボールが多い。一方で、右打者の外角真ん中に行く回数が最も多い点には変わりがないものの、今年はストライクゾーンにおける偏りが少なくなっている。
2019年まではストライクゾーンの真ん中低めに行く球が多かったが、今年はそのコースだけが極端に少なくなり、ボールゾーン低めの球が増加。フォークボールが落ちきらずにストライクゾーンに行くと危険なだけに、この変化も制球力向上の表れと言えるだろう。
広島時代の課題を糧に独立リーグで研鑽を積み、復帰したNPBの舞台で本領を発揮する藤井。ソフトバンクで育成出身選手の活躍がたびたび話題となるが、中でもひときわ異色の経歴を持つ藤井の活躍は、挫折を味わった経験を持つ人々に対しても大きな勇気を与えるものとなるはずだ。(望月遼太)
(※引用元 Full-Count)