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「巨人の岡本選手はじっくり…」末包昇大、母の鋭すぎるアドバイス!

2022年8月18日

「巨人の岡本選手はじっくり…」末包昇大、母の鋭すぎるアドバイス!

「はい、これ誕生日プレゼント」

「ボール?」

「うん。ホームランボール」

こんなドラマみたいなワンシーンも、プロ野球選手なら叶えられる。広島には、何度も記念日にホームラン球を届けている粋な男がいる。今回の主役は、末包昇大外野手(26)。大切な人の記念日に力が増す心優しきヒーローである。

妻に続いて母に送る本塁打

ドラマの始まりは、プロとして出場6試合目を迎えた4月2日の中日戦だった。5回の打席で笠原のカットボールを捉えると、打球はバンテリンドームの左中間席最深部に消えた。記念すべきプロ1号。偶然か、この日は昨年3月に結婚した妻・杏子さんの誕生日だった。

舞台は変わり、香川・坂出市。母・尚子さんは、気持ちの晴れない日が続いていた。息子を応援しようと球場で観戦した日に限って、末包のバットは振るわなかった。末包の耳には入らないように、そして自分たちを安心させるかのように、家族内でこっそりと話し合った。

「次に打つのも誰かの記念日ってことか! じゃあ、母の日に本塁打を打ってくれるのかもね」

時は少し進んで、5月8日のDeNA戦。末包は7試合ぶりに先発で起用された。迎えた4回無死満塁。宮国のシュートを豪快に振り抜き、左翼席上段まで軽々と飛ばした。妻の誕生日以来となるプロ2号満塁弾。この日は5月の第2日曜日、つまり「母の日」だった。

母・尚子さんは、ゴルフを満喫している最中だった。18ホールを回りながら、試合映像をスマホでチェックしていた。ちょうど息子が満塁弾を放ったときは、母にとってもこの日一番の勝負所。母の日の一発に、うれし涙で視界はぼやけていた。それでも冷静にバーディーを奪い、喜びに浸った。

母の日にあわせて、尚子さんのもとには花が届いていた。差出人の名前は妻・杏子さんのみで、末包の名前が書かれていなかった。「昇大からのプレゼントは、お花ではなく本塁打だったのかな」。妻に続いて母に送る本塁打となった。

「岡本選手は…」母から言われた一言

しかし、プロの世界は甘くない。打率3割台を維持しながらも先発には定着できずに、5月下旬に初めて2軍調整を命じられた。降格直後は不振が続いて打率が上がらず、長く苦しい2軍暮らしから抜け出せなかった。

母・尚子さんの誕生日である7月31日までに昇格することはできなかった。それでも、家族にとっては落ち込むばかりではなかった。母の誕生日に行われたウエスタン・リーグ阪神戦は、珍しく末包の故郷である香川県で開催される一日だったのだ。母は試合前に「打ってね」と連絡を入れてから現地に駆けつけた。

相手先発は、好投手の阪神・藤浪だった。迎えた2打席目の4回。末包はフルカウントからのカットボールを完璧に捉えた。打った瞬間に柵越えを確信し、少しの間だけ打席で仁王立ちした。この特大アーチが母親への誕生日プレゼント。試合後には観客席にいる母親から「ありがとうね」と伝えられた。この本塁打が評価され、2日後に1軍に呼ばれることにもなった。

4月中旬に母から言われた一言を忘れていない。「(巨人の)岡本選手は、もっとじっくり待ってから打っているのに……」。母は高校時代にソフトボールでインターハイに出場した経験があり、ときに鋭い指摘が飛んでくる。このときの苦言は初球を凡退した試合後とあって反論できなかった。

「(母は)めちゃくちゃ野球のことを言ってくるタイプ。自分の中で整理しきれない部分もあるのですが……」

家族の話になると、少し歯切れが悪くなるのは照れか悔しさか。それでも、昨年12月の新入団選手発表記者会見で報道陣用に書かれたアンケートには、短くハッキリと感謝の思いを書き込んでいた。

「Q・尊敬する人はいますか?」

「A・両親」

普段は照れくさくて伝えられない思いを記念日にバットで伝えているのだ。

現在は再び2軍に戻っており、少なくなった残り試合での再昇格に向けて奮闘している。マツダには連日3万人近い観客が集まる。きっと、そのうちの誰かは大切な記念日を球場で過ごそうとしていることだろう。次は、コイ党を喜ばせる番だ。「野球を見に来てよかったね」。ファンにそう思わせることもプロ野球選手にしかできない特権である。(河合洋介)

(※引用元 文春オンライン

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