あの〝ミスター赤ヘル〟が帽子を脱ぎ、両手両膝をグラウンドにつき頭を下げた─。12月10日、青空が広がる沖縄セルラー那覇で開催した名球会・オールスター戦での一コマ。山本浩二氏(76)が土下座の真相を告白したが、その理由がかっこよかった。
「試合時間が早く終わったので、お客さんに申し訳なかった。せっかくお客さんが来ている。少しでも喜んでもらおうと思ってやった」
7回制で行われ、パ・リーグに4─5に敗れて予定より早く終わったため、すぐに動いた。名球会の理事長でもあるセ・リーグの山本監督が一塁ベンチから本塁付近へと歩み寄り「もう1イニング」とパ・リーグの東尾修監督に頼んだ。近くにいた同学年の有藤通世氏にあおられる形で最上級の〝お願い〟をすると、集まった4069人の野球ファンがわいた。
東尾氏と有藤氏がその心意気をたたえ、山本、東尾両監督が握手を交わして「泣きの1回」が決定した。試合はパ・リーグが延長八回に小久保裕紀氏の適時打でリードを2点に広げ、4─6で終了。4年ぶりの名球会主催イベントは山本氏のハッスルもあって、大盛り上がりで幕を閉じた。
近年の山本氏はがんを克服して、精力的に活動している。2019年に膀胱(ぼうこう)と肺のがんで計4度の手術を受けたが、20年には解説者として現場復帰。自宅のある東京と広島を行ったり来たりの生活を送っている。今年3月には、広島の往年の名選手がマツダスタジアムに集結したレジェンドゲームに参加。シーズン後の12月には、広島市内のホテルでのOB会で新任の新井監督を激励した。
山本氏は14年から務めている名球会の理事長は今年で退き、古田敦也氏に禅譲する。「若返ってきているということはいいんじゃないの」。広島の選手、監督としてリーグ優勝を経験したカープのレジェンド。その飾らないキャラクターとあふれんばかりのサービス精神で、いまなお存在感を発揮している。(柏村翔)
(※引用元 サンケイスポーツ)