さて、スージー鈴木の「ニッポンの民意」も第3回目。今回は、おそらく日本初、「球団人格イメージ調査」を実施しました。この連載、ずっと、ちょいちょい野球ネタが入ってきてすいません。
これは「もしプロ野球12球団が、それぞれ人だったとしたら、どんな人格でしょう?」という調査です。具体的には、こんな質問。
――「問.もしプロ野球の12球団が人間だったとすると、それぞれどのような人格/性格だと思われますか? それぞれのチームごとに、あてはまる性格イメージをいくつでもお選びください(野球に詳しくない方は、チーム名から類推してお答えください)」
トンデモ質問のように思われるかもですが、マーケティング業界ではよく「ブランド・パーソナリティ」という言葉が使われます。すなわち、ブランド力強化(ブランディング)に向けて規定された、そのブランドが備えていくべき人格(パーソナリティ)のこと。
なので、人格項目を複数提示して、競合も含めた各ブランドに当てはまる人格を問う調査は、極めて普通に行われているものなのです。
今回の人格項目は、この10つ→「まじめな/親切な/素直な/知的な/魅惑的な/おしゃれな/元気な/若々しい/ユーモアのある/自由な」
さて、球団のマーケティングは、ご存じのように、本拠地の在る地域に密着したものですので、回答者に地域の偏りがあってはいけません(例:回答者が全員北海道民だったら、日ハムのポイントが跳ね上がる)。そこで最新の国勢調査(令和2年)における都道府県別人口比に、回答者の居住地区を合わせる補正をしました。
逆に、性年齢別については、男・女×10歳刻みによる各枠のウエイトをフラットにし、(おそらく)男性ミドルシニアに偏るであろう「濃い野球ファン」以外の意見をすくい取ることにしました。というわけで、今回の結果は、球団名から連想される人格について、野球に「薄い」人たちも含めた「ニッポンの民意」なのです。
前置きが長くなりました。まずは結果一覧です。
■巨人「まじめで知的」、楽天「親切さと素直さ」
これだけでは、ちょっと見にくそうなので、以下、「まじめな/親切な/素直な/知的な」を「静的パーソナリティ項目」、「魅惑的な/おしゃれな/元気な/若々しい/ユーモアのある/自由な」を「動的パーソナリティ項目」として区分けして、結果をご説明します。
まずは「静的パーソナリティ項目」。上位3球団だけを抜き出しました。
巨人(「まじめな」「知的な」)と楽天(「親切な」「素直な」)が首位。さすが巨人、まじめで知的。「球界の盟主」の座は健在ということでしょうか。
楽天の親切さと素直さには、一般的な東北人のイメージも加わっているのかもしれません。ここで興味深いのは、この「親切な」「素直な」の1~3位が楽天・広島・ロッテで共通していること。
■日ハムは「新庄効果」絶大か
次に「動的パーソナリティ項目」。こちらは日ハムと阪神が強い。
日ハムは「魅惑的な」「自由な」でトップ。また「おしゃれな」「若々しい」「ユーモアのある」でも2位につけています。これ、もちろんチーム自体のイメージもありましょうが、やっぱり「新庄効果」、めっちゃ大きいと思います。
阪神は「元気な」「ユーモアのある」でトップ。このあたりは、一般的な関西(人)のイメージともつながっているのでしょう。そういえば新庄剛志は阪神出身でもある。「動的パーソナリティ項目」は「新庄パーソナリティ項目」だったのか……。
特徴的なDeNAとオリックス
特徴的なのは「おしゃれな」のDeNAと「若々しい」のオリックス。前者は、球団のイメージに加えて、やっぱり横浜という街の、昭和から続くおしゃれなイメージも加算していることでしょう。
後者のオリックス「若々しい」には、昨年の日本シリーズにおける若手選手の活躍が影響していそうです(対戦相手のヤクルトも3位に)。
ちなみに阪神は、「静的パーソナリティ項目」すべてで最下位だったのですが、その反動として「動的~」では健闘した格好になります。逆に「静的~」で強かった巨人は、「元気な」「若々しい」「ユーモアのある」で最下位という結果となりました。
■「イメージ総量」では驚きの結果が…
さて最後に「イメージ総量」を分析します。算出方法は単純で、全項目のポイントを足し上げたもの。何だか乱暴な指標のようにも感じますが、つまりは「動的~」「静的~」も含めた全人格イメージの「存在感」を示すもので、マーケティングの現場でも、よく使われるものです。
調査前の仮説としては、やっぱり巨人と阪神が強いんだろうと思っていたのですが、いえいえ、驚くべき結果が出てきたのです。
何と、日ハムがトップで次にヤクルト、そしてソフトバンク。ちなみにソフトバンクは、首位の人格項目はありませんが、「動的~」「静的~」の両方でまんべんなくポイントを稼いだ結果です。ちなみに阪神は4位。
■球団には「人格競争」も必要
結果は以上です。最後に「野球ファンのマーケッター」としての意見を言わせていただければ、もちろん球団は強けりゃいい、強けりゃ人気も出るのかもでしょうが、これからは「強さ競争」だけでなく、一般の商品市場のように、いろんな人格がせめぎ合う「人格競争」が必要だと思うのです。
「まじめな/親切な/素直な/知的な/魅惑的な/おしゃれな/元気な/若々しい/ユーモアのある/自由な」――いろんな人格の球団がぶつかり合う、賑やかで楽しくて、そして観客が肩入れしやすいプロ野球界へ。
「元気」で「若々しい」体育会系A球団に、「知的」で「おしゃれ」な文化系B球団が挑む戦い――楽しそう! 見てみたい!
そして、最後には球団拡張(エクスパンション)で、もっといろんな人格がもっといろんな地域でワッチャワッチャする。これしかない、ここにしかプロ野球の未来はないと思うのですが、どうでしょうか。(取材・文/スージー鈴木)
(※引用元 Sirabee)