「残るのか」ではなく「残れるのか」
移籍か残留か――エンゼルス・大谷翔平(28)の今オフの去就に注目が集まっているが、もう一人、その進退に注目が集まっている日本人メジャーリーガーがマエケンこと、ツインズの前田健太(35)。
大谷と同じく、今季でツインズとの契約が満了となるマエケン。だが、大谷はエンゼルスに「残るのかどうか」で注目されているが、マエケンは「残れるのかどうか?」の瀬戸際に立たされている。
2021年9月にトミー・ジョン手術(右ひじ靭帯再建術)を受け、リハビリを経て1年8か月ぶりにマウンドに戻ってきた前田は、5日(日本時間)に行われたマーリンズとの復帰第1戦は5回を投げ1失点、無四球、9三振を奪う力投ながら、味方の援護がなく勝ちはつかず。そして11日(同)、本拠地で大歓声に迎えられながら、ホワイトソックス戦に先発した。
「4回に逆転3ランを浴び、敗戦投手となってしまいました。6イニングを投げ、失点4。復帰2試合目ですし、今後、良くなっていくと思います」
と、現地メディア関係者が楽観するのには理由がある。
「『これから良くなる』という希望的な評価の根拠になっているのは、マーリンズ戦では昨季のナ・リーグのサイ・ヤング賞投手、サンディ・アルカンタラ(27)と投げ合い、ホワイトソックス戦では昨季のア・リーグのサイ・ヤング賞2位、ディラン・シース(27)との投げ合いになりました。マーリンズ戦のスコアは『0対1』、ホワイトソックス戦は『3対4』。先発投手として、しっかりゲームメイクできていた。手術明けとしてはいい結果ではないでしょうか」(同)
だが、「手術明け」というのが去就問題に影響を与えているのである。右ヒジにメスを入れたのは、2021年9月。実はその手術だが、自身の靭帯と人工靭帯を組み合わせる新手法で、「早ければ22年シーズン後半に実戦復帰できる」とも伝えられていた。
「そうはいっても本人が30代という年齢も加味され、復帰は23年まで持ち越されたのです」(前出・関係者)
ツインズが可能だった前田の早期復帰を遅らせた理由は「大事を取って」の配慮だけではなかったようだ。
「前田の契約は8年。2016年、広島からドジャースに移籍した際に結ばれたもので、19年オフにトレードで獲得したツインズがその契約の残り年数を引き継ぎました。前田が22年シーズン後半に復活し、23年も先発投手として活躍したら 、前田側は強気な残留条件を持ち掛けたでしょう。前田は複数年契約を希望していると聞いていますが、ツインズは資金力が少ないので、その要求に応じられないのでは」(スポーツ紙記者)
「前田をくれ!」
現時点で、ツインズと前田が残留交渉を進めているとの情報はない。
また、出来高を除いた23年の前田の年俸は300万ドル(約3億9000万)だが、昨季の開幕投手、ジョー・ライアン(26)とクローザーのヨアン・デュラン(25)は72万ドル。彼らと比較すれば分かるとおり、ツインズ内では”高給取り”になる。そんな“低予算での球団経営”をさして、
「前田はメジャー通算171試合に登板した実力者(23年4月11日時点)。まだ2、3年は先発で投げてくれるはず。でも、30代半ばのメジャー投手が複数年の新契約を結び直すのは大変なこと。37歳になる今季、ダルビッシュ有が『6年1億800万ドル』(約143億円)で契約を結び直したのは、例外中の例外で、ごく一部の選手だけです。ツインズは前田のことを評価していますが、複数年を保障する経営力はありません。でも、前田クラスの代わりの投手を探すのは大変だし…。前田を残すか否かで揺れているんだと思います」(米国人ライター)
そんなビミョ~な立場に置かれていたのを見抜かれていたのだろう。昨年12月、MLB30球団のゼネラルマネージャーや有力選手の代理人らが一堂に集まるウインターミーティングで、
「前田をくれ!」
と、ツインズに交換トレードを申し込んできた球団がいくつかあったそうだ。
このときツインズは「前田以外の先発投手に不安がある。でも、彼と残留交渉をしたら、おカネが掛かって球団経営も苦しくなる」と迷い、放出をためらったという。
前田の立場からすれば、復帰と契約最終年が重なった今季、「まだ出来る」「衰えていない」というところをアピールし、ツインズとの残留交渉と「契約終了後の他球団との交渉」の両方に備えたかったはず。今のところは、「復帰したばかりだから、これから良くなるだろう」の“好意的な評価”があるだけに、今季にかけるしかないだろう。
だが、去就を巡って意外なプランも一つ、あるのだという。古巣・広島東洋カープ時代を知る関係者がマエケンの胸中をこう代弁する。
「彼の第一希望は、来年もメジャーリーグで投げることでしょう。でも、カープの先輩である黒田博樹氏(48)のように広島に帰還し、広島で引退するプランもあるのです。来年以降の新契約で安く買い叩かれるのであれば、メジャーリーグに残留すべきかどうか考えるのではないか」
黒田氏が帰還したのは、15年シーズン。精神的支柱としてチームを支え、翌16年からのリーグ3連覇にも大きく貢献し、レジェンドとなったのは承知の通り。「第二の黒田」の道を選ぶのなら、今季連敗スタートとなった新生・新井カープも大きく変わるだろう。
メジャーでは契約最終年のシーズン中から残留交渉が始まる。その動向に広島の新井貴浩監督(46)も注目しているのではないだろうか。
(※引用元 デイリー新潮)