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とにかく前向き、新井監督を信じれる理由「はだしのゲンになりたい」

2023年5月30日

とにかく前向き、新井監督を信じれる理由「はだしのゲンになりたい」

新井貴浩が新監督に就任して迎えた今シーズン。燃える赤ヘル、僕らのカープは、交流戦に突入した昨日の試合終了時点で24勝23敗の3位。独走する阪神を追い越せるような状況でこそないものの、貯金1ながら勝ち越しており、開幕前に多くの評論家から最下位予想をされていたこと、さらにコーチ経験の無い新監督が率いるチームであることを考えると、なんとか踏ん張れている方ではないだろうか。

新井がどんな野球をするのか。どんな采配をするのか。開幕から約2ヶ月が経過し、なんとなく見えてきた部分、まだ見えない部分もある。だが、一貫して言えるのは新井の明るさ。そして「とにかく選手を守る」、あるいは「とにかく前向きな発言をする」という姿勢だ。野手がホームランやタイムリーを打てば、投手がピンチをしのげば、感情をあらわにしてガッツポーズをしたり絶叫したり。サヨナラ勝ちでもしようものなら、グランドに飛び出して顔を真っ赤にしながら大喜びする。その姿は監督というよりはチームメイト、あるいは我々と同じ熱狂的カープファンのよう。ようするに新井はぜんぜん監督らしくないのだが、なかなかどうして憎めない。いや、なんとも愛らしい男だと私は思う。

これはいまに始まったことではなく、現役時代も同じ。野球中継が始まった瞬間が新井の打席で、中継のオープニングロゴが新井の顔だけをドンピシャで隠していたり、サヨナラ打を放ってセカンドベース上で片膝をついて拳を振り上げる姿が妙に滑稽だったり、たまたま中継で抜かれた(映された)時に限って変な顔をしていたり、逆に「どうした?」というくらいのキメ顔をしていたり。みなさんもご存知のとおり、新井はことごとく面白く、やたらと笑えて、当時のSNS上では新井の写真をコラージュしたものが多く投稿されたりしていた。

「僕はゲンになりたいんです」

ここで少し話を変えてみる。ご存知の方も多いと思うが、新井はマンガ「はだしのゲン」の熱狂的なファンである。筆者である私も新井と同じく広島出身で、小学校の図書館には「はだしのゲン」の単行本が置かれていた。広島以外の地域でも平和教育の一環として図書館(学級文庫)に置いてあったりするので、実際に読んだことがあるという人も多いだろう。

「はだしのゲン」を読んでまず思うのは原爆と戦争の悲惨さ。原爆によってすべてを失った広島の姿、理不尽な環境や胸が痛むような差別、なにより戦争への怒りが描かれている。もちろん私もそれを子ども心に感じたし、たくさんのことを学んだ。しかし、新井の解釈は少し違った。2013年に発行された「『はだしのゲン』創作の真実」(大村克巳著/中央公論新社)には、原作者である故・中沢啓治さんの妻、中沢ミサヨさんの言葉が記されている。

「あの人(新井)は小学生の頃、放課後遅くまで残ってマンガを読んでいたそうなんですよ。それで担任の先生が『新井、何を読んでいるんだ?』って聞いたら『はい! はだしのゲンです』って答えたんですって。それで先生が『そんなにそのマンガが好きなのか?』って聞かれて『ゲンを読むと元気が出るんです!』って夢中になって読んでいたみたいです。それで新井選手は今でも苦しい時にはゲンを読んで、元気を取り戻すそうです」

「はだしのゲン」=戦争マンガという印象が強いが、新井は、原爆や戦争の悲惨さも理解しつつ、それ以上に、そういう環境の中で力強く生きる主人公のゲンの明るさ、元気さに強く惹かれていたのだ。2011年、闘病中だった中沢啓治さんのところに小学校時代の担任の先生が新井を連れてお見舞いに行ったことがあるのだが、新井は中沢啓治さんに対し「僕はゲンになりたいんです」と言ったそうだ。その時、小学校のころに読んでいた「はだしのゲン」の単行本を中沢啓治さんに渡すと、単行本には真っ黒な手あかが付いていた。なんと、そのほとんどが新井の手あかだというのだ。大のカープファンとしても知られる中沢啓治さんは単行本を撫でながら「マンガ家冥利(みょうり)に尽きるね」と喜んだ。そこで新井はサイン入りのバットをプレゼントし、新井は「麦のように生きろ」というメッセージが書かれた色紙をもらい、自宅に大切に飾っているという。

思えば新井はずっとそうだった

その「麦のように生きろ」というメッセージは、ゲンの父親のモデルである中沢啓治さんのお父さんが言った言葉。マンガの中のセリフでも「元(ゲン)、お前は麦になれ。厳しい冬に青い芽を出し、踏まれて踏まれて強く大地に根を張り、まっすぐに伸びて実をつける麦になるんじゃ」と書かれている。

思えば新井はずっとそうだった。現役時代、下手くそでも、三振をしまくっても、結果が出なくても、ゲンのように元気に、懸命に野球と向き合った。そしていまはカープの監督となり、チームを「家族」と言い、監督というよりもみんなのお兄さんのような存在でチームをけん引している。名監督のようにどっしりはしていない。試合中、あまりに興奮したり喜んだりしすぎて、藤井ヘッドコーチにツッコまれ「あっ」と冷静さを取り戻したりする。審判にリクエストを要求するも断られ、苦笑いをしながら恥かしそうな顔を見せたりする。プロ野球の監督像とはあまりにかけ離れているが、それが「新井貴浩」なのである。

カープが負けた時、ピッチャーが失点した時、得点圏にランナーを置く場面で打てなかった時、予想と違い采配が裏目に出た時。TwitterなどのSNSで激しく非難する声があがることが多々ある。もちろん私自身もそのような感情になったりする。しかし、新井は違う。たとえ望むような結果にならなくても、手を叩いて前を向き、負け試合であっても必ず前向きなコメントを言ってくれる。

ゲンは元気の元。どんな逆境の中にあっても、元気に、明るく、たくましく生きた少年・ゲン。それは、まさに新井そのものと言えるのではないだろうか。阪神からカープに復帰した新井は、カープに元気と強さをくれた。3連覇の原動力となった。監督としてはまだ未熟かもしれないが、彼の前向きな姿勢は、いつかきっと大きな実をつけた麦になり、チームと私たちを歓喜の秋に連れて行ってくれると私は信じている。だから、腹が立った時は画面に映るベンチの新井を見てほしい。中継を観戦できずテキスト速報などを見ている場合は、新井の顔を想像してほしい。そこには、どんな時にも選手をねぎらい、守り続ける新井の姿があるはずだ。広島で生まれ、子ども時代には旧市民球場で大好きなカープを応援して育った新井。彼の前向きな姿勢は、ある意味では「私たちファンのあるべき姿」なのかもしれない。

(※引用元 文春オンライン

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