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カープ女子の姿も減った?「Aクラス陥落」を乗り越えるための課題は

2024年10月10日

カープ女子の姿も減った?「Aクラス陥落」を乗り越えるための課題は

「広島三冠」はならず

9月は4勝18敗、まさかの急失速で6年ぶりのリーグ優勝を逃がし、クライマックスシリーズ進出の3位(Aクラス)さえもキープできなかった。10月1日のDeNA戦を落とした時点で、「勝率5割以下」も決定。9月1日時点では貯金は今季最多の「14」をカウントし、優勝マジックナンバーの点灯も時間の問題とされていたが、歴史的大敗で新井貴浩監督(47)の表情も徐々に厳しくなっていった。

しかし、「変わった」のは新井監督の表情だけではなかった。試合を中継で見た際、一見するとカープファンで真っ赤に染まっているように見える「MAZDA zoom-zoom スタジアム広島」だが、実は空席が目立ち始めていた。特に、かつて球場までこまめに足を運んでいた、カープ女子の姿が減っているという。

「巨人に逆転で勝利した9月21日のことです。殊勲打を放った末包昇大(28)が、『試合途中で帰っていくお客さんを見て悔しかった』と話していました。勝っても負けても、最後まで応援するのが広島ファンでしたが……」(地元メディア関係者)

チームの失速を強く印象付けたのは、9月10日からの巨人3連戦だろう。その時点まで、首位巨人を1ゲーム差で広島が追っており、対戦成績は8勝8敗3分け。本拠地・マツダスタジアムに限定すれば広島の4勝1敗2分けで、初戦の先発マウンドを任された森下暢仁(27)も21年10月から対巨人戦12試合で、8勝負けなしだった。この3連戦を3連勝すれば「マジック16」が点灯と、文字通りの首位攻防にして天王山決戦でもあった。

だが、第1戦で森下をKOした巨人は、11日の第2戦でも2点を追う9回、守護神の栗林良吏(28)を攻略して大量9得点で大逆転勝ちを収めた。「広島有利」の下馬評を完全に覆す3連敗となったが、気になったのは、観客動員数だ。10日は3万283人、11日2万9869人、12日が2万9966人である。マツダスタジアムの最大収容人数は3万3000人と発表されている。勝利を予感させる有利なデータがあって、6年ぶりのリーグ優勝に向けた大一番にしてはちょっと少ないのではないだろうか。

「11日はサッカーJリーグのサンフレッチェ広島が、今年2月にオープンした新スタジアムで天皇杯準決勝を戦っていました。そちらにファンが少し流れたのかもしれません。今年、広島のスポーツ熱はかなり高まっていました。5月にバスケットボールBリーグの広島ドラゴンフライズが初優勝を果たし、野球ではカープ、Jリーグではサンフレッチェがともに優勝争いを繰り広げ、『プロ野球、サッカー、バスケの広島三冠』が見られるのではと盛り上がっていました。8月31日、カープとサンフレッチェは同時に首位に立ったのですが…」(前出・同)

カープ女子はどこへ?

9月の失速を抜きにしても、マツダスタジアムに集まるファン層が変わってきた。広島は12球団の中でも若い女性ファンが多いことで知られており、彼女たちは「カープ女子」と呼ばれた。チームカラーの「赤」を主体にしたレプリカユニフォームなどのアパレルや応援グッズがウケたのだろう。14年には、「カープ女子」が流行語大賞の候補にノミネートされたほどだ。

NPBのデータによれば、同年の広島主催試合の観客動員数は190万4781人で、1試合平均2万6455人だった。翌15年は211万266人、16年は215万7331人、17年は217万7554人。18年は223万2100人で、19年は222万3619人だった。17年からの3年間は1試合平均でも3万人を超えており、その人気はコロナ禍でイベントへの観覧制限がされるまで続いた。制限が解除された22年は196万8991人で、昨年は200万人台に回復している。

「10月3日時点で、今季の広島の主催観客動員数は205万3660人と発表されました。12球団中8位。1試合平均で2万9338人。主催の最大観客数は3万1710人です」(関係者)

「カープ女子」に沸いた2010年代後半ほどではないにしても、減少幅はさほど大きくない。しかし、「ファン層が変わった」と感じるのは“野球の見方”にあるようだ。

「カープ女子がブームだったころ、野球に詳しいわけでもない、いわゆる“にわかファン”もいました。カープ側の立ち見席がいっぱいだからと、対戦チーム側に陣取ってしまうファンもいたほどです」(ライバル球団スタッフ)

今でもカープに若い女性ファンは多いが、ファッションとしてレプリカユニフォームを着て街中を歩く女性はほとんど見なくなった。その代わり、カープと野球が本当に好きだというファンが、熱心に球場に足を運んでいるのだろう。試合途中で帰る観客の姿を見て末包は悔しさを口にしたが、誰よりも悔しい思いをしているのは、やはり新井監督のはずだ。

「何しろ責任感の強い監督です。サッカー、バスケと“広島三冠“を達成できなかった責任を強く感じていると思います。新井監督が就任した23年当初、ファンの期待はさほど高くありませんでした。でも、新井監督は若い選手を根気強く使い、昨季は2位にチームを引き上げ、地元ファンは『24年は優勝を狙える』と思うようになりました。実際、外国人スラッガーが故障でチームを離れても、勝ち続けて来ました。ここに広島三冠の県民の大きな期待も重なり、9月の歴史的失速がガッカリ感を強めてしまいました」(前出・地元メディア)

9月に入った時点で首位にいたチームがBクラスに転落したのは、NPB史上では初めてとなる。指揮官の責任感の強さから「進退」を心配する声もあったが、球団は新井監督の能力を高く評価しており、来季の続投が決まった。

「チームにホームランバッターがいないに等しいので、しぶとく繋いで点を積み上げていく野球を強いられる。『繋ぐ野球』は広島の伝統スタイルでもありますが、一発で試合の流れを変えることができないので、先発投手が先に点を取られると苦しくなってしまいました。8月は先発陣が踏ん張り、打線も元気だったんですが」(ベテラン記者)

巨人に3タテを喰らった後、「選手がボッ~としていることも多い」との目撃談も聞かれた。熱中症の症状に近い雰囲気だったという。マツダスタジアムに限った話ではないが、屋外球場で行われる試合前の練習中は「暑さ」との戦いになる。午後6時の試合開始から約1時間は陽が落ちてもまだドンヨリとした蒸し暑さが残っていて、ドーム球場を本拠地とする巨人との違いも影響していたようだ。

来季も続く暑さとの戦い

今オフは打線の強化が必須となる。ノーヒットノーランを達成した大瀬良大地(33)はシーズンを通して1点台の防御率を残したが、勝ちは6つしか付いていない。打線の援護に恵まれなかったのはエース対決となる試合も多かったからだが、「1点も与えられない」と思って投げるのと、「打たれても打線がすぐに取り返してくれる」と思ってマウンドに向かうのとでは精神的な疲労度も大きく違ってくる。

これに加えて、ここ数年の異常に暑い“8月の奮闘”の疲れが重なり、ペナントレースの勝負どころとなる9月には、その影響がもろに出ることになる。

「新井監督の性格もありますが、選手が活躍すると真っ先にベンチを出て、その選手を労ってきました」(前出・同)

負けが込み雲行きが怪しくなってきても、「選手は一生懸命に頑張っている」と、記者団の質問にも笑顔で答えてきた。監督として間違った姿では決してない。だが、歴史的失速となった以上、敗因分析の一つに、新井監督の“優しさ”が取り上げられることもあるかもしれない。時代は変わったとはいえ、プロである以上、ある程度の“厳しさ”は必要ということか。

9月28日、マツダスタジアムは巨人優勝の舞台となってしまった。優勝指揮官インタビューの後、広島球団は阿部慎之助監督(45)が現役時代に打席へ向かう際に流していた曲「September」を球場いっぱいに響かせた。粋な計らいに、詰めかけた巨人ファンは喜んだことだろう。グッドルーザーぶりを見せてくれた新井カープに、来季の奮闘を期待したい。

(※引用元 デイリー新潮

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