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ポジティブ発言に垣間見る苦悩…球団関係者が語る「新井監督の内心」

2024年10月15日

ポジティブ発言に垣間見る苦悩…球団関係者が語る「新井監督の内心」

広島が、シーズン終盤の“歴史的大失速”で、首位から4位に転落した。8月終了時点では貯金13で首位を走り、6年ぶりのリーグ優勝への期待が高まっていたが、9月は5勝20敗と大きく負け越して4位に後退。優勝どころか、クライマックス・シリーズ進出も逃した。【西尾典文/野球ライター】

“野手が投手を育てられない”今のカープ

なぜ、広島は大失速をしたのか。今年の成績をみると、チーム防御率は3位で優勝した巨人や2位の阪神と大差はなかったものの、チーム打率と本塁打数は最下位に沈み、得点力不足に大きな課題があることがわかる。ただ、9月の月間成績だけに絞れば、“違った側面”が見えてくる。

9月はチーム打率.241。6月(打率.218)、7月(打率.211)と比べても高い。それとは反対に、6月は13勝10敗、7月は9勝10敗。打てないながらも、しぶとく勝ち星を拾ってきた。一方、チーム防御率は4月~8月まで5カ月連続で3点未満を記録していたが、9月は4.29と大幅に悪化している。

「先発投手は、多少の失点をしても、打線が好調であれば『取り返してくれる』という気持ちで投げることができます。序盤から思い切った配球で相手打者を攻めていき、ゲームの中盤でこれが効いてくることが多いですね。逆に味方打線の援護が少なければ、初回から1点もとられたくないという意識が強くなって、どうしても慎重な配球になりやすい。何とか(打順の)一回りは抑えても、二回り以降は、投球の幅が狭くなり、厳しくなりますよね。9月のカープ投手陣を見ていると、そんな印象を持ちました。『野手が投手を育てる』とよく言いますけど、今年のカープは真逆になってしまいましたね」(投手出身の球界OB)

今年の先発陣は、床田寛樹と大瀬良大地、森下暢仁が支えたものの、9月の防御率は、床田が5.14、大瀬良が5.31、森下が6.92と、軒並み散々な数字となった。床田と森下は、主力投手になって以降、優勝争いのかかるシーズン終盤を初めて迎えたことで、これまでに経験がない強いプレッシャーに押しつぶされたのかもしれない。結果的に、投手陣が踏ん張っている間に、打線の調子が上がらず、最終的に投手陣も共倒れになってしまった。

内心では、かなり我慢しているはず

“大失速”のもうひとつの理由は、若手の底上げが乏しかったところだ。若手野手は、ショートの矢野雅哉を除いて、台頭してきた選手が見当たなかった。しかも、矢野は積極的に抜擢されたわけはない。新外国人のレイノルズ(※6月末に契約解除)が開幕直後に怪我で離脱し、ショートの小園海斗がサードに回り、空いたポジションに矢野が入った。

シーズン序盤は、若手の田村俊介や久保修、林晃汰をスタメンで起用したこともあったが、結果が出ないと、すぐに二軍へ降格させている。堂林翔太をはじめ、会沢翼や上本崇司、田中広輔、松山竜平といったベテラン陣が成績を落としていることから、若返りを進めてもよかったのではないだろうか。

広島の新井貴浩監督は、若手選手に結果が出なくても「責任は自分にある」という発言を繰り返していた一方で、若手の野手を抜擢しきれなかった。

「新井監督は、ドラフト6位で入団して、そこから厳しい練習を乗り越えて文字通り“叩き上げ”で主力選手になった。今の時代は、どうしても効率性や自主性が求められ、自分の若い頃と同じようにはできないことを理解している。それが(ポジティブな)発言や態度にも出ているように見えますね……。ただ内心では、かなり我慢しており、若手に物足りなさを感じているようです。また、新井監督は優しい性格ですから、実績のある選手の“意地”に期待している。監督自身も阪神を一度自由契約になって、そこから広島に復帰して4番まで打ってMVPをとった経験もありますからね。昨年は、それで上手くいって、前年5位から2位に浮上できたんですが、いよいよベテラン選手が衰えを隠し切れなくなってきた。今年に関しては、若手に切り替える判断が、ちょっと遅れたところもあったように思います」(広島の球団関係者)

思い切った世代交代に踏み切れるか

秋山翔吾や菊池涼介、野間峻祥は、ある程度の結果を残したとはいえ、30代前半から後半に差し掛かっている。来年以降、思ったような活躍ができないかもしれない。さらに、投手陣では、大瀬良と九里亜蓮は来年34歳となり、森下も将来的にメジャー挑戦の希望を球団側に伝えている。強力な投手陣が維持できるのか、不透明な状況だ。

「松田元オーナーは、球団の責任で優勝を逃したと話しており、新井監督の長期政権を検討しているようです。ただFA(フリー・エージェント)で補強するような球団ではありませんし、最近は外国人選手もなかなか当たりません。そうなると、自前で選手を引き上げるしかないですが、野手は矢野と末包(昇大)が出てきたくらいで就任前のレギュラーとあまり変わっていない。チームを作り変える必要があるため、オーナーも長期政権を示唆したのかもしれません。新井監督は情に流されずに、思い切った世代交代に踏み切れるか、重要だと思いますね」(前出の球団関係者)

来年は勝負の3年目。新井監督は、2018年以来のリーグ優勝を手にすることができるだろうか。

(※引用元 デイリー新潮

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