チームに必要なポイントゲッター
期待の高さの表れだ。広島の新井貴浩監督が広島県廿日市市で新人合同自主トレーニングを視察した際、ドラフト1位の佐々木泰(青学大)、2位の佐藤柳之介(富士大)と3位の岡本駿(甲南大)、4位の渡邉悠斗(富士大)の4選手を春季キャンプで一軍スタートにする考えを明かした。
今の広島が最も必要としているのが、ポイントゲッターの台頭だろう。昨年は8月まで粘り強い戦いぶりで首位に立っていたが、9月以降に7勝22敗と大失速。原因は明らかだ。チーム打率.238はリーグワーストで52本塁打は12球団ワースト。投手陣の疲労がたまる夏場で得点が入らないと苦しい。新井監督はシーズン最終戦後のセレモニーで、就任3年目に向けて改革を行うことを宣言している。
「来シーズンはさまざまなことが変化する年になると思います。来シーズンだけでなしに、変わっていかなければいけない。そう考えています。変わるということは、それとともに痛みも生じてくると思います。今年よりも来シーズンはさらに厳しい道のりになると思います。覚悟と信念を持って、強いチーム、強い選手を育てていきたいと思います」
「強い選手」の系譜
衣笠祥雄氏、金本知憲氏、新井監督と広島に脈々と引き継がれている「強い選手」の系譜。即戦力の新人野手として佐々木、渡邉にかかる期待は大きい。特に渡邉は高校、大学の7年間で1度も大きな故障がなく練習、試合に打ち込んできた。3年秋には打率.439で首位打者、捕手でベストナインを獲得すると、4年春は一塁で本塁打、打点の二冠王に。バットのヘッドを返さず、豪快に振り抜く打撃スタイルは大きな可能性を抱かせる。
スポーツ紙記者は「新井監督と雰囲気が似ているんですよね。武骨で泥臭いスタイルも広島のカラーに合う。一塁でレギュラーをつかむ活躍を見せればチームにとって大きなプラスになる」と期待を込める。
新井監督は駒大で際立った成績を残したわけではなく、ドラフト6位で広島入団後に猛練習で素質を開花させた。本塁打王のタイトルを獲得するなど、プロ20年間で2383試合出場し、打率.278、319本塁打、1303打点を記録。通算2203安打を積み重ねたが、ドラフト6位以下の指名順位で名球会入りした選手は新井監督と元阪急の福本豊の2人のみだ。
「鍛えてくれた方々のおかげ」
新井監督は週刊ベースボールのインタビューで、現役時代を以下のように振り返っていた。
「それこそ鍛えてくれた方々のおかげです。『おかげさま』。そんな気持ちですよね。入団したころ、まさか自分がここまで実績ってものを積み上げられるとは夢にも思っていませんでした。もっと言えば、一軍にいけるともあんまり思っていないくらいでした。チャンスをくれた方々への感謝は尽きないです」
「(思い出は)いっぱいあるんですよ。神宮の試合前練習でノックを受けていて、ポロッとしたんですよね。『オマエなんかいらない。外野でカベ当てしとけ』って言われて……。もう開門して、お客さんもたくさんいる中で、外野スタンドのフェンスに向かってずっとカベ当てをやらされました。(広島)市民球場で親子ゲームがあったとき、二軍のゲームが終わって、一軍のアップが始まっているんですけど、ホームベースのところで正座をさせられていたこともあります。お客さんがいる中で、きついのと恥ずかしいのと……。そういう思い出ばかり、たくさんありますよ(笑)。当時は本当にしんどくて、苦しくて、イヤでしたけど、あのとき、ああいうふうに鍛えてもらったからいまの自分があるんですよね」
渡邉はまだまだ発展途上の選手だ。プロの世界で新井監督のように大化けできるか。入団会見で挙げた目標は打率3割、30本塁打、100打点と三冠王獲得。有言実行でその目標を達成した時、広島は頂点に立てる。(写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)