県岐阜商出身の広島ドラフト1位・佐々木泰内野手(22)=青学大=が開幕1軍を逃した。5日のDeNA戦(横浜)で左太もも裏を肉離れ。治療に1カ月以上を要することになった。
1軍で居場所をつかむ矢先のけがだった。プロ入り前の昨年11月に左肩を脱臼しており、春季キャンプは2軍。1日に初めて1軍昇格すると、2日の楽天戦(倉敷)で安打を放ち、新井貴浩監督(48)も「いい雰囲気を持っている」など高く評価していた。
本人が一番まさかと思っているかもしれない。昨秋の明治神宮大会で左肩を負傷するまで大きなけがはなく、体の強さが売りだった。「鉄人」金本知憲さん(56)が広島時代につけた「背番号10」を受け継いだことを喜び、「プロで年間を通して戦い抜ける体をもう一回、一からつくりたい」と意気込んでいた。
背中を追う金本さんだって、最初から鉄人だったワケではない。若手時代にけがで1軍のチャンスを逃している。それからは負傷しても人に言わず、自分でもけがと認めない人になった。今でも語り草なのは右手1本で打った安打だ。
阪神時代の2004年7月29日、中日戦(甲子園)で左手首に死球を受け、痛みにもだえた。後に骨折と分かる重傷。翌30日の巨人戦(甲子園)では試合前の練習から左手をまともに使えていなかった。当時阪神担当だった私にも重傷なことくらいは分かった。試合直前、ロッカーからベンチに向かう金本さんの横に並んで歩き、左手のことを聞こうと思った。声をかけようとしたその時、「暑い、暑い」と追い払われた。
冗談めかして言われたのだが、気迫を感じて何も聞けなかった。考えてみれば、「出る」と覚悟を決めた人に痛いのかゆいのと尋ねたところで無駄なのだ。結局、金本さんはその試合で安打を2本も打った。そんな鉄人の「10番」を受け継いだ佐々木は今、リハビリをしている。けがが癒えて、1軍に戻ったときにどんな姿を見せるのか注目したい。(大阪駐在・井原泰大)
(※引用元 中日スポーツ)