印象が変わった打線
首位・阪神を1.5ゲーム差で追いかける広島。印象が変わったのが打線だ。昨年はリーグ5位の415得点と貧打に苦しみ、首位争いをしていた9月に5勝20敗と大失速したが、今年は違う。リーグ2位の136得点をマークし、チーム打率.249はリーグトップ。打線の核になっているのがサンドロ・ファビアンだ。
助っ人外国人の活躍はチームの命運を大きく左右する。昨年の戦いぶりが顕著に表している。4年ぶりのV奪回を飾った巨人は開幕前にメジャー通算178本塁打のルーグネッド・オドーアが電撃退団したが、シーズン途中に加入したエリエ・ヘルナンデス、ココ・モンテスの活躍が光った。一方で、広島はマット・レイノルズが開幕2試合に出場も無安打に終わり、左肩痛で長期離脱。一軍復帰が叶わず6月28日に契約解除となった。ジェイク・シャイナーも12試合出場で打率.133、1本塁打、5打点と振るわず、9月20日に退団した。
終盤の大失速が響き、優勝どころかCS進出を逃した。野球評論家の伊原春樹氏は昨年10月に週刊ベースボールのコラムで、以下のように指摘した。
「球団は新井貴浩監督に来季も指揮を託す方向だという。今季と同じ過ちを繰り返さないためにも、攻撃力アップを果たさなければいけないのは言うまでもない。今季は坂倉将吾がチーム1位の12本塁打だったが、これだけでは心もとない。小園海斗、矢野雅哉ら若手のさらなるレベルアップも果たさなければいけないし、その下の世代の台頭も待たれる。しかし、現場の努力だけでは限界もある。最近はなかなか難しいが打てる外国人打者を獲得しなければいけないし、それこそFAに参戦するなどしてフロントがしっかりと戦力整備を行うことも重要になってくる。新井体制3年目に向けて、どこまで腰を入れるか。歴史的大失速から巻き返すために、球団の本気度が問われてくる」
打線の軸として稼働
昨年と同じ轍は踏まない。新たに獲得した助っ人がファビアン、エレフリス・モンテロの両外国人だった。モンテロは開幕して早々に左脇腹の肉離れで戦線離脱したが、ファビアンが打線の軸として稼働している。
広角に安打を飛ばし、4月30日の巨人戦(東京ドーム)から16試合連続安打。5月5日のヤクルト戦(神宮)では、3回に小川泰弘の内角に食い込むシュートを左翼席に運ぶ先制の3号ソロ。この一発が来日初の決勝打となった。その後も打率をグングン上げていく。10日の広島戦(横浜)では3点差を追いかける4回無死一塁で、平良拳太郎のスライダーを振り抜き左翼ポール直撃の4号2ラン、6回に同点に追いつく右前適時打を放つなど猛打賞3打点と大活躍。逆転勝利を飾り、昨年から続いていた横浜スタジアムの連敗を8で止めた。
「同じ攻めが通用しない」
他球団のスコアラーは「良い打者は同じ攻めが通用しない。ファビアンにも当てはまります。1打席目で凡打に打ち取られても、試合中に修正してその後に同じ球がきたらきっちりヒットゾーンに飛ばす。打撃が柔らかくて変化球への対応力が高いことも強みです」と警戒を強める。
まさに、この証言を裏付ける打撃を見せたのが、5月14日の巨人戦(マツダ広島)だった。相手の先発左腕・井上温大に4月29日の東京ドームでの初対戦では3打数無安打に抑え込まれたが、この試合では初回二死で高めのフォークを右前に運ぶと、6回無死一塁の打席では外角の146キロ直球を逆らわずに右中間へはじき返し、適時二塁打を放った。40試合出場でリーグトップの打率.329をマーク。53安打もリーグトップの数字だ。
相棒のモンテロも一軍に復帰し、復帰初戦となった13日の巨人戦(マツダ広島)で延長12回にサヨナラ打を放った。ファビアン、モンテロが中軸で機能すれば、昨年のような失速はしないだろう。今後は相手バッテリーのマークが厳しくなる中で、結果を残せるか。ナインや広島ファンと白星の喜びを分かち合うために、打ち続ける。(写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)