大阪万博の一角に広島の選手とファンによる赤いかたまりができた。万博に出展するドミニカ共和国が16日、広島の練習生、デ・ロス・サントス投手(24)とメヒア内野手(22)を招いてイベントを行った。
2人は広島が同国で運営するカープ・アカデミーから来日。今季は四国アイランドリーグplus愛媛に派遣されている。ペレス駐日大使からステージに迎えられ、来場者に語ったメッセージが印象的だった。
サントスは昨年大リーグ球団との契約が2度も流れたといい、失意の底で受けた広島からのオファーに「光が差し込んだ」という。メヒアはメッツ傘下にいたが、膝のケガもあって昨年解雇された。その後、カープから声をかけられ「不可能なことはない。諦めなければ実現できる」と再び前向きになれたそうだ。
この2人に限らず、広島に感謝する人は同国に数え切れないほどいる。カープ・アカデミー設立は1990年。後に大リーグ(MLB)全30球団が運営するようになるアカデミーの先駆的存在であり、MLBの追随は開校に尽力した先代・松田耕平オーナーの先見の明の証しとなった。
90年代はソリアーノ、ペレスと後にMLBでも活躍する野手がアカデミー経由で広島に入団。その後は続々と進出したMLB各球団に人材を奪われ、私がアカデミーを訪れた2006年は投手のみ、契約10選手の小規模になっていた。
運営環境が厳しくなっても独自の再生力に活路を見いだした。2人の練習生のようにMLBが見放した選手の受け皿となり、伸ばす方法だ。16~18年のリーグ3連覇に貢献した左腕フランスア、強打のバティスタもMLB退団組だった。
同国で広島が残した足跡にペレス駐日大使は「その遺産は今、有望な選手に引き継がれている」と感謝していた。長年の貢献は日本球界全体への好印象を育み、中日、巨人など同国で選手獲得のパイプを築いた球団も少なからず恩恵を受けている。(大阪駐在・生駒泰大)
(※引用元 中日スポーツ)