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『雨中ヘッスラ』で球場を沸かせた男たち!引退試合で披露した選手も

2025年6月25日

『雨中ヘッスラ』で球場を沸かせた男たち!引退試合で披露した選手も

日本列島は梅雨真っ盛り。プロ野球の試合も雨天中止になることが少なくないが、雨の中、球場まで足を運んでくれたファンへの感謝を込めたサービスパフォーマンスとして、すっかりおなじみになったのが、「雨中ヘッドスライディング」だ。【久保田龍雄/ライター】

あんな無茶をするなんて

雨で試合中止になった直後、指名された選手がランニングホームランよろしくダイヤモンドを1周し、本塁で水しぶきを上げながらヘッドスライディングする人気パフォーマンスが、いつから始まったのかは、定かではない。

筆者が過去の新聞をチェックしたところ、NPBでは、1964年5月10日に札幌円山球場で行われた東京対西鉄で、東京・ソロムコ、西鉄・ロイの両助っ人が演じているのが、現時点で見つけた“最も古い記録”になる。

東京が1対0とリードの4回、降雨のため、ノーゲームになったが、当時北海道でプロ野球の公式戦が開催されるのは年に数度とあって、スタンドの1万人の観衆が「何とかしろ!」と騒ぎ出した。

そんなファンの要望に応える形で、両助っ人がベンチを飛び出し、ソロムコは一塁側、ロイは三塁側からダイヤモンドを走りはじめた。途中で合流すると、ロイがスライディングを披露。ユニホームを泥だらけにしながらの熱演に、スタンドはやんやの大喝采だった。

さらに10分後、二人は再びグラウンドに姿を現し、今度は二塁ベースで同時スライディングを鮮やかに決めた。

その後、「釧路から来た」という長髪の老人が外野席からグラウンドに降り、シャドープレーを演じて、笑いを取るなど、選手、ファン一体となったパフォーマンスで盛り上がった。

1980年7月15日のヤクルト対広島では、雨で試合開始が20分遅れると、広島の外野手・デュプリーが赤ヘルに赤い手袋といういでたちで、グラウンドに姿を現した。

スタンドのファンが「一体何事だろう」とあっけに取られて見つめるなか、シートで覆われた打席に立ったデュプリーは、1球目を見送る動作のあと、2球目をフルスイングして、ランニングホームランよろしくダイヤモンドを1周。三塁を回るときに念のため打球の行方を確認する迫真の演技を見せ、最後は水しぶきを上げて本塁にヘッドスライディングした。

試合後、発案者の古葉竹識監督はじめ5人から5000円ずつ計2万5000円を貰い、ご機嫌のデュプリーだったが、その日の「プロ野球ニュース」(フジテレビ系)で夫のパフォーマンスを見た夫人から「あんな無茶をするなんて」とたっぷり油を絞られたという。

雨中の“現役ラストラン”

その後も、“踊るホームラン王”日本ハム・ウインタースに代表されるように、“雨中ヘッスラ”は外国人選手のお家芸だったが、日本人選手で初披露と報じられたのが、日本ハム・広瀬哲朗だ。

1987年6月9日のロッテ戦、雨で試合中止が決まると、入団2年目の広瀬がベンチを飛び出し、一、二塁を回ったあと、ショートの定位置で好プレーのシャドーパフォーマンスを演じた。当初はこれでお開きにする予定だったが、スタンドから「いいぞ、もっとやれ!」とアンコールを要望する大拍手が起きる。

先輩の島田誠からもけしかけられた広瀬は「引っ込みがつかなくなってしまってね」と苦笑しながら、本塁付近を覆ったシートの上で水しぶきを上げながら、ヘッスラを決め、先輩たちから総額2万5000円を手にした。

雨中ヘッスラのパフォーマンスを広く普及させた“功労者”として知られるのが、ロッテ・諸積兼司だ。

入団時に報道陣から新聞掲載用に婚約者とのツーショット写真を求められると、前代未聞の抱擁キスシーンを提供。入団発表の席でも、「新人王を獲ったら、(ロッテの)CMで中山美穂さんと共演させて」と重光昭夫オーナー代行に直訴するなど、“マリーンズの愛すべきキャラ”として人気者になった諸積は、ファンへのサービス精神も旺盛だった。

入団2年目の1995年頃から、雨が降る中、足を運んでくれたファンに「ありがとうの気持ちを伝えたい」の思いから、雨中ヘッスラのパフォーマンスを始めた。時にはビジターの試合で、対戦チームからも「やってくれ」とリクエストがでるほどのスペシャリストに。

そして、2006年9月24日の引退試合(日本ハム戦)では、晴天にもかかわらず、特別にシートと水が用意され、現役最後の安打とともに十八番のヘッスラで13年間の現役生活のフィナーレを飾った。

諸積同様、引退試合でヘッスラを演じたのが、広島の捕手・倉義和だ。2016年9月25日のヤクルト戦、5日前に現役引退を発表した倉は、8番捕手として先発出場。初回の先頭打者1人限定で、黒田博樹とバッテリーを組んだ。

1回表、黒田は先頭打者・坂口智隆にストレートの四球を与え、ここで倉の役目は終了。正捕手・石原慶幸と交代した。

現役最後の出場を飾るには、ちょっぴり物足りない幕切れだったが、その後、試合は2死一、三塁から雨で中断し、1時間20分後の15時過ぎにノーゲームに。そして、この雨が倉に再び出番をもたらす。

チームメイトたちに「行け、行け」と背中を押されるようにしてグラウンドに姿を現した倉は、シートの敷かれた打席で“エアスイング”して、ダイヤモンドを1周。最後はお約束どおり、水しぶきを上げて、ヘッドスライディングを決め、「黒田さんに『やれ』と言われたんで。今日しか来られない人もいるし、せっかく来てもらったので、何とか記憶に残ればと思って。僕らしくていいんじゃないですか」と満足そうにコメントした。

試合がノーゲームのため、出場は記録されず、“幻の引退試合”となったが、雨中の“現役ラストラン”は、今もファンの脳裏に鮮明に焼きついているはずだ。

(※引用元 デイリー新潮

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