
猛虎が止まらない。マツダスタジアムで行われた7月10日の広島×阪神戦は、阪神が2点のビハインドを跳ね返して逆転勝ち。これで驚異の11連勝となり、首位の座をがっちりとキープした。
セ・パ交流戦明けのリーグ戦再開後は実に11勝1敗という、圧巻の快進撃。巨人、DeNA、広島との直接対決をいずれも3連勝で制し、2位・巨人とのゲーム差は今季最大の9.5にまで広がった。猛暑の夏、虎党にとってはまさに「我が世の夏」と呼ぶにふさわしい日々が続いている。
しかしこの試合は阪神の強さとは別に、悪い意味で深く記憶に残るものとなった。主審を務めた梅木謙一球審のストライク・ボール判定が、大揺れだったからだ。
6回裏、広島のファビアンがフルカウントから145キロのストレートを見送り、四球を選ぶ。三振を確信した阪神・伊原陵人が、マウンド上でガックリと肩を落とす仕草を見せた。
続く坂倉の打席では死球の判定が下されたものの、リプレーではバットのグリップエンドに当たっていたように見えた。場内はざわめいたが、判定は変わらず、すっきりしない空気が残った。この回、伊原は3点を失い、途中降板している。
8回裏には広島・モンテロの打席で阪神・石井大智が投じた6球目のストレートが低めギリギリに決まり、見逃し三振の判定。納得のいかないモンテロは首を振りながらベンチへ戻ると、バットを真っ二つにへし折るという異例の行動に出た。怒りの感情を隠そうともしないその姿は、映像でもはっきりと捉えられている。
ところが、である。同様のコースへの投球が、9回表の阪神の攻撃時にはボールとされたのだ。
近本光司の第5打席、カウント2-2からの6球目だった。外角の際どいスライダーは映像で見る限り、ストライク。梅木球審は「ボール」とコールした。その瞬間、見逃し三振を確信していた広島・滝田一希と坂倉将吾バッテリーが、同時に頭を抱えるシーンが映された。
モンテロが激怒したように、あれが本来はボールだったとすれば、近本への同じコースのボール判定は正しいことになる。逆にモンテロが怒ろうとも正しいストライク判定だったならば、近本のボール判定には疑問符がつく。ストレートとスライダーでは軌道が違うため、単純に「全く同じコースだった」とは言えないながら、納得度は著しく低かった、ということにはなろう。
このように、両チームにとって腑に落ちない判定がいくつも重なったことで、試合後のファンサイトやXでは論争が勃発することに。
「梅木球審はその場の空気で判定している」
「審判が試合をコントロールするな」
とりわけ低めのコースの判定に一貫性が見られず、ストライクゾーンの基準が揺らいでいる印象を与えたことが、不満の火種となった。
メジャーリーグではすでに「ロボット審判」が導入され、3Aなどの下部リーグではストライク・ボール判定を自動化するシステムが投入されている。チャレンジ制度の併用も含めて本格導入が検討されており、公平性と一貫性の確保を目的に、着々と技術が実用段階に入りつつある。
日本でもこうしたテクノロジーの導入について、そろそろ本気で議論を始めるべき時期に来ているのかもしれない。
選手の技術と努力が判定によって損なわれることなく、正当に評価される環境を整えること。それこそが、プロ野球の未来を守るために欠かせない一歩である。
審判とて人間、万能ではないし、わざとミスをするわけでもないとはいえ、「にんげんだもの」ではなかなか許されない時代になってきた。(ケン高田)
(※引用元 Asagei plus)