
7月の広島カープは、まるで昨年の悪夢をなぞるような、暗いトンネルの中にいる。勢いを失ったチーム、崩れゆく戦線、揺れるファン心理…。今、再び「広島燃ゆ」の言葉が現実味を帯びてきた。
2024年9月4日に発売された「週刊ベースボール」の特集記事は「目指せ!6年ぶり10度目のV 広島燃ゆ」だった。発売直後からチームは急失速し、月間成績は5勝20敗、勝率2割。特にビジターゲームでは1勝もできず、壊滅的な結果に終わった。
そして今季、7月の広島もあの「9月の悪夢」を思い起こさせるような失速ぶりである。ここまで3勝14敗3分、勝率は1割7分6厘だ。残すは7月29日からの阪神3連戦のみとなった。7月の最終カードは「広島燃ゆ」の再来を避けられるかどうかを占う、まさに正念場だ。
この3連戦の結果次第で、月間成績の印象は大きく変わってくる。3連勝すれば6勝14敗3分で勝率3割、2勝1敗でも勝率2割5分と、数字の上では多少、持ち直すように見えるかもしれない。しかし1勝2敗なら昨年9月と同じ勝率2割、3連敗となれば勝率は1割5分となり、「広島燃ゆ」をも上回る、球団史に残る惨状となる。どのパターンでも厳しい現実に変わりはないのだが…。
直近の巨人との2連戦では、合計11点を献上して連敗。投手陣は崩壊状態にある。7月末の支配下登録期限を前に、球団は育成の前川誠太内野手と、辻大雅投手の支配下登録を決めたが、期待された外国人投手の補強は「リストに欲しい選手がいなかった」として断念した。編成の手詰まりを象徴しているようだ。
現時点で、首位阪神とのゲーム差は14.5と大きく開いた。一方で、最下位だったヤクルトは6連勝を飾り、広島との差を5.5ゲームに縮めてきた。序盤はAクラス争いに加わっていた広島だが、今や最下位転落の可能性すら見えてきた。
思えば新井貴浩監督はシーズン前に、こう語っていた。「変化する年になる。変わるということは、それに伴う痛みも生じてくると思う」
その「痛み」は今、予想をはるかに超える規模で、チームを襲っている。戦力、戦略、そして精神面、全てがガラガラと音を立てて崩れていく中で、新井監督の言葉は不思議な説得力をもって響いてくる。
7月9日発売の「週刊ベースボール」は「広陵高校の育成力」を特集。広陵高校は7月26日、第107回全国高校野球選手権広島大会の決勝で崇徳高校を破り、甲子園出場を決めた。迷走するカープとは対照的に、ひたむきな高校球児たちの戦いに、地元ファンの視線が移ろい始めている。
今季の広島にとって、この7月がどれだけ深刻な意味を持つのか。阪神との3連戦が、単なる月末の一カードではなく、「広島燃ゆ」を回避できるかどうかの試金石となる。燃え上がるのか、燃え尽きるのか…。(ケン高田)
(※引用元 Asagei plus)