
日本シリーズが始まった10月25日、広島カープは育成を含む4選手と来季の契約を結ばない旨を発表している。驚いたのはその中にプロ15年、第3捕手としてチームを支えてきた磯村嘉孝が含まれていたことだ。
磯村の今季1軍の試合出場数は、わずか6。チームが低迷し、世代交代を進めていく以上、致し方ない決定だったのかもしれない。
しかし、本当に大丈夫なのだろうか。というのは、正捕手の坂倉将吾は今春キャンプ終盤に発覚した右手中指の骨折が響いたのか、打撃が低迷。盗塁阻止率は1割8分1厘と落ち込み、新井貴浩監督は一塁や外野など、来季からの野手兼任を示唆している。
「今季51試合に出場した石原貴規、来季4年目の清水叶人に期待しているようです」(スポーツ紙記者)
来季20年目を迎える大ベテラン、會澤翼を残したのは経験値の浅い石原たちをカバーするためか。だとしたら、磯村を残す選択もあったはず。チームはドラフト会議で捕手を支配下指名していない。
「育成枠で城西大学の好捕手・小林結太を指名しました。捕手の指名を狙っていた球団なら、絶対に指名リストに入っていた逸材です。打撃センスが高く、来季開幕戦までに支配下登録されるかもしれません」(セ・リーグ球団スタッフ)
だが現時点では「来季の広島の弱点は捕手」と言わざるをえない。セ・リーグ球団スタッフが続ける。
「やはり、マエケン(前田健太)の帰還先は広島では。メジャーリーグで10年間やってきた経験で、若手捕手を育ててもらい…」
見方を変えれば、捕手が弱点となったことで、アメリカでひと仕事を終えた前田を獲得する「理由」ができたわけだ。
日本の球界には、好捕手が投手を引っ張り、同時にベテラン投手が若手捕手を育てる「伝統」がある。
巨人がマエケンを調査している、との一報が出たのは、巨人がクライマックスシリーズで敗れた翌日だった。プロ野球報道の「調査中」には「すでに交渉が始まっている」との解釈がある。
8月上旬、米ヤフースポーツで、前田の去就が取り上げられていた。「カープはカブスの鈴木誠也も在籍していた」と広島球団を紹介し、黒田博樹がMLBの契約を蹴って帰還した話を出して「前田も黒田と一緒にプレーしていたので、キャリアを締めくくるのに最適な球団だ」としていた。
「前田もカープ愛は強いはず。でも、自分が活躍できるところを選ぶ冷静さも持っています」(スポーツ紙記者)
日本シリーズ同様、前田争奪戦も熱くなりそうだ。(飯山満/スポーツライター)
(※引用元 Asagei plus)