2020年が幕を開けた。令和として初めて迎える新年は、東京五輪や5Gの実用化など、まさに新しい時代の幕開けを予感させる。
新しい時代には、新しいスターも生まれる。昨年4年ぶりBクラスという結果に終わった広島にとっても、新たな歴史の始まりが期待される。佐々岡真司前投手コーチが新監督に就任。1月7日には注目のドラフト1位森下暢仁(明大)ら新人選手が入寮し、翌8日からは合同自主トレーニングも始めた。
監督交代は球団だけでなく、選手にとってもまた大きな転換期となる。出場機会に恵まれていなかった選手がチャンスを得ることもあれば、新星が突如現れることもある。前回広島の監督が代わった2015年、抑えに抜擢されたのが当時22歳の中崎翔太だった。
緒方政権の5年で293試合に登板し、14勝16敗、114セーブをマークした。投球回数261回2/3は1年平均52回1/3。3年連続胴上げ投手とともに、3連覇への貢献度の大きさを物語る。
監督交代による大きな変化を身をもって感じた1人だろう。今回の監督交代は、新しい風を受けながらも、自らのポジションを再構築させる立場にある。
「Bクラス」に責任を感じる中崎
昨年11月に右膝半月板部分切除手術を行い、現在もリハビリ段階にある。3連覇を支えた代償はシーズン当初からあった。軸足である右足に感じる痛み。投球に影響しないわけがなかった。新シーズンのこと、自分のことだけを考えれば、メスを入れるのは早い方がいい。それでも言い訳を口にはせず、手術をシーズン終了後まで待ったのは主力としての矜持だったように感じる。
「僕のこの成績がチームの成績に直結したと言っても過言ではない」
守護神として背負った責任の重さを感じさせた。
1月中旬からのキャッチボール再開をへて、キャンプが行われる2月中の投球練習を目指している。
「また一からのスタートになる。ポジションを奪って、しっかりとした成績を残したい。できることをしっかりやれば結果もついてくると思う。ほかの人に負けないくらい頑張ればいいかなと」
まずはコンディションを万全に整える。過去には血行障害や腰痛症などのけがを乗り越えてきた。今回もまた目の前の壁を乗り越えることができれば、また新しい自分がいると信じている。そうなれば、十分戦える自信は、ある。
一岡が発した「後ろの方で」
中崎だけではない。ともに中継ぎとして3連覇に貢献した一岡竜司と今村猛もまた、捲土重来を期す。3投手で一昨年から昨年、計74試合登板数を減らした。
2人にもまた勤続疲労による歪みが出た。
一岡は下半身のコンディション不良で7月に出場選手登録を抹消された。8月に1度復帰するも、1試合の登板で再降格となった。シーズンオフに入り、コンディション不良は完治。一度体重と体脂肪を絞り込み、筋量を上げながら再び戦う肉体を作り上げようとしている。
「変わらないといけないと感じた。筋肉量はチームでも少ない方だったし、知識もなかった」
新しい時代に備え、自己改革を進める。
普段の立ち居振る舞い同様、コメントはいつも控えめ。目標の設定も謙虚で、投げるポジションも問わなかった。だが、昨年末の契約更改後は珍しくポジションへの意欲を口にした。
「自分の真っすぐで勝負して、勝ちパターン、後ろの方で投げられるのがベスト。若い選手もいっぱいいるので、一軍のいい位置をとれるように頑張りたいです」
一岡にも、右腕の浅指屈筋挫傷を乗り越えた経験がある。この先にまた、新しい自分がいるはずだ。
昨季は27試合登板に終わった今村
今村は緒方政権下の5年、敗戦処理からセットアッパー、抑えまで幅広い役割を務めた。1度も一軍登板ゼロがないままプロ10年を駆け抜けたものの、昨年は一軍初昇格が7月まで遅れ、27試合登板に終わった。これまで順風満帆に425試合投げてきたわけじゃない。苦しい時期もあった。
3年連続50試合登板から、’14、’15年は2年で計38試合にしか登板できなかった。それまでの自分の投球とのギャップに戸惑いながらも、殻を破って新しいスタイルを確立させた。’16年から2年連続で60試合以上に登板。’18年も43試合に投げた。
だからこそ「いろんなことにチャレンジしないといけないと思っている。自分の体を見つめ直して、いいところも悪いところも受け入れて、また成長したい。やれるんじゃないかなと思います」。再び這い上がる道筋は見えている。
「やるからにはチームの勝敗を左右するポジション、いいポジションで投げたい。ライバルは多い? 楽しみではあります。それはそれで」
ベテランではないが、若手でもない
中崎、一岡同様、今村もまたチームメートへのライバル心をぎらつかせるタイプではなかった。それが広島ブルペンのひとつの空気感をつくってきたような気もする。
ただ、新しい風に立ち向かう立場となった新シーズンを前に、それぞれが新たな一面も見せている。
広島には新加入の2選手を含め、5人の外国人投手がいる。最大で3人登録も、投手陣再建を目指す球団の思いがうかがえる。だからこそ、燃えるものがある。中崎は言った。
「次々に発表されましたけど、外国人枠もある。最後は僕ら日本人が頑張らないといけないと思う。負けないようにやっていきたい」
ほかの日本人投手も新監督就任で横一線となる争いを前に、目の色を変えていることだろう。3投手はまだ20代でベテランではないが、若手でもない。求められるのは、結果のみ。新監督の構想の中で大きな期待はあっても、ポールポジションは与えられていない。時代は自らの力で切り開いていかなければいけないときもある。
(※引用元 Number Web)