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金属のような打球音!『孤高の天才』、前田智徳の芸術的なティー打撃

2020年2月13日

金属のような打球音!『孤高の天才』、前田智徳の芸術的なティー打撃

「アーノルド・パーマーみたいだな」

丸佳浩(30=現巨人)に、そう言ったことがある。なんのことかというと、スイングをした後に右手でバットを上げるしぐさが、往年の名ゴルフプレーヤーに似ていたからだ。2008年の入団当初のこと。私は打撃統括コーチだった。

そんな丸を見て、「そんなんじゃダメだ」と切り捨てたのが、「孤高の天才」といわれた前田智徳(48)だった。冗談めかしてではあったが、前田はめったに他の選手に話しかけないから、よく覚えている。

前田が晩年の頃、リハビリのため二軍の大野練習場に来た際、「若い子にアドバイスをしてやってくれよ」と頼んだことはある。が、「いや~、僕にはできないですよ」と素っ気ない。なのに、なぜか丸にだけは声をかけた。どこかに可能性を感じたからだろう。

そんな前田の話をしよう。

1989年のドラフト4位で入ってきた。私は二軍打撃コーチ。入団時の印象は今思えば、打席の左右の違いはあれど、鈴木誠也と重なる部分が多かった。前田は「走攻守」すべてにおいて私が見た高卒選手の中でトップクラス。巨人では松井秀喜の2年目、岡本和真の1年目、坂本勇人の若い頃を知っている。松井はパワーヒッター。岡本は体は大きかったが、芯はできていなかった。

前田は細身。誠也も同じような体形だった。両者に共通しているのは、体にバネがあったこと。入団時からスカウトの評価が高かったのも同じで前田を担当するスカウトからは、「腰があまり良くないから練習量を抑え気味にして欲しい」と言われた。それは了承したものの、当時は練習が終わった後、大野寮の室内練習場で19時ごろから夜間練習を行っていた。

ネットから7、8メートル離れた所から250~300スイングを休みなしで打ち返すというティー打撃を行っていた。下半身を強化し、スタミナをつける。正確性、持続力を養う練習だ。すると、前田は「打てそうにありません」と弱音を吐くではないか。

「新人なんだから、とりあえずやれるところまで頑張ってみなさい」と諭した。「分かりました」と前田が打ち出すと、「カキーン」という金属バットのような音が響いた。ヘッドを利かせ、ほぼ同じ所に打ち返している。他の選手がチラチラ見始めた。そのうち、全員が手を止め、前田を見ていた。スイングスピードが速くなければ、木製バットはあんな音はしない。

ネットから離れているのがミソ。距離が近いと、飛んだ方向が分からない。7、8メートル離れていれば、バラつきが分かる。二軍の選手なら、バラつくのが普通である。正確性、再現性が高いから同じ所に打ち返せる。結局、休まずに全部打ち切った。

その後、一軍に定着してからも、前田のティー打撃は、巨人の松井秀喜が足を止めて見入ったほど、芸術的なものだった。(内田順三/前巨人巡回打撃コーチ)

(※引用元 日刊ゲンダイ

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