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引退した広島・庄司隼人との再会、フロント入りしても野球の虫は健在

2020年2月19日

引退した広島・庄司隼人との再会、フロント入りしても野球の虫は健在

安倍さん……と声をかけられた時に、おおっ! とすぐに返せなかったのは、その青年の顔がすごくやさしくなっていたからだ。

毎年の今ごろ、グラウンドで顔を合わせていた時は、まなじりもっとつり上げて、「狼」のような横顔でバットを振っていたものだ。

そんな記憶しかなかったから、目の前にいるスリムな青年が、昨年まで広島カープの内野手としてユニフォームを着ていた庄司隼人君だとわかるまでに、ちょっと時間がかかった。

28歳にして、おそらく人生初めての名刺交換ではないか。

静岡の常葉橘高校を出てから、プロ野球に10年。

そのわりには、差し出すタイミングも、差し出した“低さ”も堂に入っていて、差し出された名刺が震えてもいなかった。

10年目の引退、そしてフロントに

高校の時に取材で会って、その「野球の虫ぶり」に共感、感動して以来、春の日南キャンプのたびに、球場に彼を訪ねていた。

「10年目にして、初の一軍キャンプですよ!」

ほんとにうれしそうに声を弾ませていた10年目の昨季を最後に、現役を退いた。

一軍生活はわずかだったが、高校を出てプロ生活10年なら、立派に“お祝い”だろう。

そんな「送別コラム」を、秋にこの連載で書いたら、それを読んでくれた本人が電話をくれて、あらためて“お祝い”の言葉を贈ることにもなった。

そして、お互い1日しか行かないソフトバンクのキャンプで再会することになるのだから、彼とはつくづく縁があるのだろう。

今年からスコアラーに就任し、カープのフロントの一員として働くことになったという。

おめでとう! もう一度、祝福だ。

「一軍と二軍の違いって?」

室内でのホークスの練習を見ながら、すぐに野球の話になった。

いつもそうなのだが、彼と野球の話をしていると、話が途切れない。

こちらも訊きたいことがいくらでもあるし、野球の選手には珍しく、彼は自分でも疑問を持って、問い返してきたりするからだ。

バリバリの一軍選手から育成の三軍選手までが入り乱れて練習している風景を目の前にして、こんな話になった。

「一軍選手と二軍選手の違いって、なんなの?」

広島カープ・庄司隼人選手は、まさにその一点において、10年間血の汗を流してきた。

「ずば抜けたものがあるかどうか……そこですね」

うーん、と数秒考えて、返ってきたのはこんな答えだった。

「一軍に食いつくには、ずば抜けたものが1つあれば。でも、どうだろう……一軍で活躍するためには、2つないとダメかな……」

「平均点突破」に挑み続けた10年

50メートル5秒台の快足とか。

「ソフトバンクの周東(佑京)みたいに、足だけで“ジャパン”なんていうケースもありますからね。まず、飛び抜けたウリがあるかどうか。平均点っていうのは苦しいんです、ボクみたいに」

笑顔で話してくれたが、合わせて笑うことは決してできない。

庄司隼人の10年とは、まさに、「平均点突破」に挑み続けた10年間だった。

「でもね……」

こういう振り方の後の話は、絶対に面白い。

「野球はタイムじゃありませんから。5秒台でも、見ながら走ると急に遅くなるヤツって、いるんですよ」

ベースランニングは技術の塊

見ながら走る。確かに「野球」というスポーツは、前だけを見て一目散に突っ走る場面はほぼない。打ち損じの内野ゴロだって、捕球→送球する相手野手の様子を、横目で捉えながら走る。

「たとえば、打球が外野の頭を越えたら、バッターランナーはまず打球の様子を見て、外野手の動きを見て、前にランナーいたらその動きも見て、三塁のベースコーチを見て……視線を送るポイントが4つも5つもあるんです。自分が踏むベースも、一瞬見ないといけないし。

そのたびに視線が動くから頭も動きますし、頭が動けば、体重の7分の1ぐらいの重たいものが首の上でグラグラ動くわけですから、ボディバランスのコントロールもしなきゃいけない。走るスピードはどうしても落ちがちになるんですよ」

中には、ほとんどスピードが落ちないどころか、ロングヒットのほうが加速が効いているように見える選手すらいるという。

庄司隼人選手は、現役当時、そこのところを磨いて、ちょっと自信を持っているという。確かに、ウエスタンリーグの試合結果を見ていると、庄司選手、“6秒3”のわりに三塁打が多かった。

「野球のベースランニングって、スピードよりむしろ技術だと思うんです。すべてのスポーツの中で、1辺25メートルぐらいの正方形をいかにコースロスなく、一瞬の状況判断をしながらスピーディーに走り回る競技なんて、他にありませんよね」

なるほど……。そのわりに、日頃のベースランニングの練習は単調で平凡。早く終わらないかなと思いながら漠然と走っているのが、野球の現場の現実であろう。

「野球の虫」の理論が止まらない

「点取りスポーツの野球で、その“点取り”にいちばん直結しているベースランニングの練習が、結構ほったらかしになってると思いませんか?」

その通りだ。思った通り、話が面白くなってきた。

「ロングヒットや一塁ランナーとしてのエンドランの場合は、顔が右方向、つまり外野方向を向きながら走る時間が長いわけですから、普段の練習でも、そこをポイントにすれば、顔が右方向を向きながら全力疾走できるボディバランスや技術を獲得できる。

一塁ランナーだと、必ずバッターのインパクトの瞬間を確かめてから、打球方向に視線を移す。ならばベースランニングの練習の中で、右見て、左見て、また右見て、左見て……左右を交互に見ながら、直進してターンする。そういう練習を取り入れてもいいですよね。どうせならアップの時のランニングに、そういうベースランニングの技術的要素を含めてもいいじゃないですか」

「野球の虫」の理論の展開が広がって止まらない。

本当の「勝つための練習」とは?

プロはそういう練習やってるんだ?

「いや、やってないですね」

ちょっと意外だった。

そういえば、野球の現場って、「勝つ野球」とか「なかなか負けないチーム」を標榜しながら、「勝ち」につながるとは考えにくい練習も、いまだ延々と続けている。そんな場面はないだろうか。

100メートル近い遠距離で放物線の遠投を繰り返す時間があるのなら、50~60メートルをいつでも捕れる高さで正確に投げる練習をしたほうが。

捕球→送球の間隔がのんびりしたキャッチボールも実戦の中ではあり得ない場面だし、ノンストレスの複数箇所のフリーバッティングよりも、シーズン中は実戦的な「一本バッティング」のほうに時間を費やしては。必要を感じる選手は、自主練の時間に行えばよい。

広島カープのルーキースコアラー・庄司隼人との語らいは、後から後から、汲めども尽きぬエンドレス・トークになった。

野球と苦闘した人は良い指導者になれる

「明日から沖縄です!」

パ・リーグ担当なので、日本ハム、ロッテ、楽天の様子を見て回るという。

「プロに入って11年目で、初めてユニフォームを着てない春季キャンプなんですよ。練習を見ていると、なんで自分が“向こう側”にいないんだろう……って違和感はありますけど、いろんな選手たちの野球を見るって面白いですね。去年までは、自分のことでいっぱいいっぱいでしたから。楽しくてしょうがないです」

将来が楽しみな「野球人」が、1人誕生した。

野球と、野球に励む者を愛せることが何より良い。野球と苦闘した時間が長かったことも、さらに良い。出来ない者の“痛み”がわかるからだ。先々、良い指導者になれるのではないかと思う。

春のキャンプには、エエッ! と思う人までやって来る。

思わぬ人と会えて、話す。

そして、少しずつ、今年の「野球」が目覚めていく。(安倍昌彦)

(※引用元 Number Web

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