ライバルは多いが、見ていて何かやってくれそうという雰囲気がある選手だ
開幕に向け、状態を上げてきたのが、広島カープだ。俺はキャンプ時から優勝候補と予想しているが、練習試合を見ても印象は変わらない。メヒア、ピレラと、外国人選手の好調さもあって、野手陣の競争が激しくなってきたが、俺が今一番気になるのは、一塁スタメンをあの男が手にできるかどうか。プロ11年目を迎える堂林翔太だ。鯉のプリンスと言われた人気選手だが、この8月で29歳か。早いものだね。
堂林は入団3年目の12年、野村謙二郎監督に一軍に抜てきされ、いきなり全試合出場を果たした。このときはサードで、攻守とも粗っぽいが、思い切りがよく、見ていてワクワクするような、可能性を感じさせる選手だった。ただ、その後、なかなか結果が出ず、外野にも回り、15年からの緒方孝市監督時代は、チャンスも一気に減った。当たり前だ。プロは結果を出してナンボ。新しい選手がドンドン入ってくるから、順番をじっと待っていて居場所が空くわけではない。
なぜ堂林を気にしていたかと言うと、彼の出始めのころは巨人のコーチだったのだが、原辰徳監督が堂林をすごく気に入っていたからだ。同じ右のサードもあるのか、すごく気にしていた。ただ、原監督がいつも言っていたのが、グリップの位置だった。「後ろに入り過ぎなんだ。あれじゃ、インコースをさばけないんだがな」ということだった。
その堂林が今年は練習試合で調子がいい。10日の阪神戦(マツダ広島)では、ガンケルのインコースをうまくさばいて満塁弾。画面を通してだが、原監督が課題と言っていたグリップの位置も、体の前で、ゆったりしていたように見えた。彼の中にも、今年が勝負という気持ちが強いのだろう。佐々岡真司新監督になったことで、もう一度、自分をフラットに見てもらおうと、気持ちを奮い起こしているんじゃないかな。
自主トレでは、後輩の鈴木誠也からもアドバイスをもらったらしい。この世界、実績もそうだが、年齢は大きい。プライドを捨て、絶対に結果を出そうと覚悟を決めたんだなと思った。そうは言っても、現状では、ほかの選手の兼ね合いもあってスタメンは簡単じゃないが、左投手用のスタメンで終わる選手じゃないと思う。プライドを捨てたプリンスが、今年、必ず花を咲かせる、と俺は思っている。(写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)