高らかなV奪回宣言をしたのに、同じ新人監督同士の高津ヤクルトとの最下位争い。厳しい現実に直面する佐々岡広島だが、実は、皮肉なことに負の広島カープ監督史の伝統継承とも言える。
広島は、コーチ歴を重視して監督を決める。佐々岡真司新監督(53)もその路線の一環だ。現役を引退してもユニホームを脱がず、首脳陣としていろいろなポストを歴任した緒方前監督も同様だった。その緒方政権を1、2軍投手コーチを歴任して支えた実積を評価されての佐々岡監督だ。
ファンからの抜群の人気度、選手時代のリーダーシップに関しナインからの厚い信頼があるOBの黒田博樹(45)、新井貴浩(43)の両氏。他球団もうらやむような最強コンビ候補がいるのに、佐々岡監督が誕生したのも、広島の伝統的な人選をかたくなに守ったからだ。
広島の新監督はまれに例外はあるものの、就任1年目は軒並み不成績に終わっている。
「佐々岡監督に求めるのはV奪回だ」と松田オーナー。「優勝しかない」と佐々岡監督も呼応したが、現実はそれほど甘くない。球団史上初のリーグ3連覇を果たした緒方前監督も初年度はBクラスの4位。
就任1年目にいきなり優勝など広島史上まれなケースで、Aクラス入りさえ数少ないのが現実。就任1年目の優勝は、1986年の阿南監督が最後だ。Aクラス入りにしても94年の三村監督の3位以来、出ていない。
「本格的な半永久的な長期政権」と期待の大きかった野村監督は初年度の2010年にいきなり5位。以後も5位、4位、3位、3位で2014年のシーズン後に解任されている。
最下位争いの佐々岡監督は例外的なケースではなく、広島の悪しき伝統とも言える。が、このまま浮上できなければ、短期政権に終わるのは避けられなくなるだろう。
そして、ファン、ナインからも待望される黒田、新井新政権誕生のXデーがますます注目度を増すことになる。(江尻良文)
(※引用元 夕刊フジ)