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プロ野球「ムラ社会」の崩壊…相次ぐ独禁法違反疑いで露見した閉鎖性

2025年5月7日

プロ野球「ムラ社会」の崩壊…相次ぐ独禁法違反疑いで露見した閉鎖性

公正取引委員会が、プロ野球12球団を統括する日本野球機構(NPB)を調査していると報じられた。プロ野球の日本シリーズ(日本S)の取材パスをフジテレビから没収したことなどが、独占禁止法違反(不公正な取引方法)に当たる恐れがあるという。

フジは昨年、他局の日本S中継と同じ時間帯に米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手らが出場したメジャーのワールドシリーズ(WS)のダイジェストを放映した。これに激怒したNPBが、取材パスを没収した。

公取委はこのNPBの行為に「取引妨害」の可能性があると判断。NPBからすれば、フジテレビに“お灸を据えた”つもりだったかもしれないが、メディアと一蓮托生だったプロ野球という「ムラ社会」の論理を世間に露呈することになった。

ファンもメディアも、選手自身もメジャーに視線が向く中、危機感を抱いたNPBによるムラ社会の理屈を破った者への制裁が、公取委から次々とNOを突きつけられている。

NPBとMLBは競合関係?

今回の公取委の動きをスクープしたのは、朝日新聞だった。

「野球機構 独禁法違反疑い」「日本シリーズ フジ取材パス没収」「公取委調査 コンテンツ制約の恐れ」

朝日新聞は4月30日付朝刊1面で大きく報じ、プロ野球に詳しくない読者にもわかりやすいように図表も添えられていた。記事でも図表でも、公取委はNPBと米大リーグ機構(MLB)を「競争関係」にあると位置付けていると指摘している。

独禁法に照らし合わせた構図はその通りだろう。だが、NPBとMLBが「競争関係」にあるかと問われれば、市場規模に何倍もの開きがある実態から乖離していると首をかしげざるをえない。

プロ野球のシーズンが佳境を迎えた昨秋、日本国内でも主役は、間違いなく大リーグのドジャースであり、大谷選手だった。大谷選手がメジャー史上初となる同一シーズンでの「50本塁打、50盗塁」を達成した勢いそのままに、ドジャースは大谷選手の移籍1年目にWSを制覇した。スポーツ紙も連日、ドジャースの試合結果や大谷選手の打撃の詳細などを大々的に伝えた。

そうした状況の中、日本Sは開催された。

フジの行為は「裏切り」か

時差の関係で、WSは日本時間の午前に行われ、日本シリーズはナイター開催と区分けができていたはずだった。しかし、WSの放映権を持つフジは午前の中継に加え、他局の日本シリーズ放映と同じ時間帯にも急きょ、ダイジェスト版を放送した。これが、「信頼関係が著しく毀損された」としてNPBの怒りを買ったというのが背景だ。

朝日新聞の報道では、NPBは24年11月10日まであった野球日本代表「侍ジャパン」の強化試合でもフジに取材パスを発行しなかっただけでなく、フジが予定していた日本シリーズ第3戦の中継局もTBSに移そうとしたという。

NPBからすれば、メディアとともにプロ野球を長年にわたって盛り上げてきたという「身内意識」が強く、フジの行為は「裏切り」に映っただろう。しかし、冷静な目でみれば、フジが番組編成を変更してまで、WSのダイジェスト版を放送したのは、視聴者のニーズが高かったからに他ならない。

大谷選手が出場したWSの結果はネットニュースなどで知っていたとしても、ダイジェスト版であったとしても試合を見たいというファンがいたことを見逃してはいけない。実際、フジテレビが放送したダイジェスト版は一定の視聴率を獲得している。

1995年に野茂英雄氏がメジャーの扉を本格的にこじ開けて以降、日本のトップ選手のメジャー流出が続く。選手が海を渡ることは止められないとしても、NPBにとっては、日本国内のマーケットは自分たちの縄張りだという意識は当然あるだろう。

しかし、野球や大谷選手ら日本人メジャーリーガーのファンにとってはボーダーレスだ。ドジャースのスポンサー企業に日本の大手企業が名前を連ね、3月のドジャースとカブスによる日本開幕戦の時期に代表されるように、国内でもメジャー関連のグッズは人気が高まっている。NPBの強硬な姿勢は、逼迫している現状の裏返しともいえる。

その一方で近年は、プロ野球という日本の「ムラ社会」で通用してきた掟が、公取委から独禁法違反の恐れを指摘されるケースが相次ぐ。

相次ぐ独禁法違反の疑い

2020年には、プロ野球のドラフト会議での指名を拒否して海外に挑戦した選手について、帰国後の一定期間において契約を制限する12球団の申し合わせが、調査の対象となった。

申し合わせは、08年に新日本石油ENEOS(現ENEOS)に所属していたドラフト1位候補だった田沢純一投手がメジャーのレッドソックスと契約をしたことに端を発した。すでに日本球界からメジャーへの選手流出が加速していたが、アマチュアの有力選手が直接、メジャーへ行く動きに危機感を募らせての防御策だった。

しかし、この「田沢ルール」は、独禁法の「共同の取引拒絶」に違反するとの疑いから撤廃された。

24年には、選手の代理人制限について、公取委から初めて行政指導にあたる「警告」を受けた。12球団における代理人交渉は00年オフに解禁されて以降も、職種を弁護士に限定し、1人の弁護士が複数の選手を代理できない点が問題視された。

日本球界ではビジネスライクな代理人交渉を毛嫌いする傾向が根強い。だが、メジャーリーガーにとっては「契約は交渉のプロに任せる」というのが当然の流れになっている。閉鎖的な体質にメスが入った格好だ。

「田沢ルール」も代理人交渉の選定基準も、日本プロ野球選手会は見直しを訴えてきた。それでも、公取委から指摘されるまでNPBが自ら動くことはなかった。

こうしたNPBの姿勢から、一枚岩だったはずの12球団との関係にも歪みが生じてきた。

NPBにとって「最悪のシナリオ」とは

毎日新聞の5月1日付朝刊によれば、フジからの取材パスの没収には、パ・リーグの球団を中心に直後から「強い対応をしすぎたのではないか」との指摘があったという。

また、今季からファンによるSNS(交流サイト)投稿に、プレー中の動画などの投稿を認めない方針を導入したが、日本ハムは当初、主催者判断で一部の投稿を容認した。NPBから改善勧告を受けて謝罪の上で引っ込めたが、選手会は、ファンの楽しみを奪うとして、他のプロスポーツリーグと比べて過度な規定の緩和を訴える。

NPBにとって、「最悪のシナリオ」がまだある。

朝日新聞が5月1日付朝刊で、今後注視されそうな事案として指摘しているのが、選手の移籍を禁止した「保留制度」だ。

日本のプロ野球もメジャーリーグも自国の選手の入り口は「戦力均衡」の観点からドラフト会議の中での指名になる。選手が希望する球団を選べないからこそ、プロ入り後の移籍は選手の大きな権利となるが、日本とメジャーでは、選手が自由に移籍できるようになるフリーエージェント(FA)権取得までの期間は大きく異なる。

メジャーが在籍6年で取得できるのに対し、日本は12球団内での移籍が可能な国内FAで高校出身選手が8年、大学・社会人が7年、メジャーなど海外への移籍が可能になるのは一律9年と定められている。

選手会は現行の「保留制度」が「選手の移籍の自由を阻害している」として、公取委への申し立ても視野に協議を進めることを公表している。

時代に取り残されるNPB

FA権取得期間の短縮は、選手のメジャー流出を加速させることに直結し、プロ野球界にとっては死活問題だ。

また、12球団も選手のFA権取得前にメジャー移籍を認めるポスティングシステムによって、メジャーの移籍先球団から多額の譲渡金を受け取って球団運営や戦力補強に充当してきた。だが、FA期間が短縮すれば、ポスティングシステムによる移籍に対応するには、より早期に選手を手放すことを迫られる。

ただ、一般企業においても、優秀な人材は国境を越えて会社を渡り歩くグローバルな時代になっている。プロ野球という特殊性が、今後も時代に逆行して移籍を大幅に制限できるかは議論の余地がある。

ファンの視線はメジャーへ向き、これまでNPBが二人三脚で盛り上げてきたと思っていたメディアの報道もメジャーへと傾倒する。強硬に封じ込めようとすれば、選手会の反発を招き、公取委からも独禁法違反の恐れを指摘される。

八方塞がりで時代に取り残されつつあるNPBに「日本のプロ野球独自の魅力を高める自助努力」を促す識者の声があるが、それは理想論であって現実は甘くない。

野茂氏のメジャー移籍から30年。危機的な未来を予想し、中長期的な視点でファン層の拡大や収益化を図る取り組みはなされてきたか。日本の様々な分野がグローバル化の波にさらされる中で、プロ野球界も決して例外ではない。

(※引用元 JB PRESS

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