
かつて広島カープには「グラウンドの詐欺師」がいた。名捕手・達川光男だ。そのDNAを継承し、数々の珍プレーで球場を沸かせたのが、石原慶幸である。
2001年のドラフト4巡目指名で広島に入団。2020年11月にユニフォームを脱ぐまでの19年間を、広島一筋で過ごした。その高いキャッチング技術は「12球団トップクラス」「最強の捕手」と称される一方、ファンをアッと言わせる「トリックプレー」も枚挙にいとまがなかった。
例を挙げよう。2013年5月7日のDeNA戦。二死一塁の場面でキャッチミスをした後、石原は完全にボールを見失った。ところがとっさに砂を鷲づかみしてボールと見せかけると一塁走者の進塁を阻止。この「ひと握りの砂事件」は、広島ファンの誰もが知る「名インチキシーン」として語り継がれている。
2017年5月14日の巨人戦では、一死二・三塁からスクイズを敢行したものの、外されて空振り。ところが捕手がボールを取り損なって二者が生還するという「珍スクイズ空振り」という結果に。
さらにその打席では混乱の中、両軍がカウントを勘違いし、石原が四球で出塁するというハプニングで沸かせている。
そんな石原の、プロ野球史に残る最大の珍プレーがある。2011年5月14日の巨人戦での「サヨナラデッドボール」だ。
3-4と巨人リードで迎えた9回裏。巨人のマウンドは、新外国人レビ・ロメロ。しかし四球、暴投で同点となる。二死満塁の場面で打順が回ってきたのが石原だった。
なんとロメロが投げた初球が、石原を直撃する。もんどりうって倒れ込む石原。だがなんのことはない、すぐにすっくと立ち上がった石原はガッツポーズだ。
広島はサヨナラ勝ちし、この日、5打席に立って無安打の石原がヒーローインタビューのお立ち台に立つと、こう言い放ったのである。
「え~、僕でいいのか迷いましたけど、チームが勝ててよかったです。みんながつないでくれたチャンス。それまで自分自身、打てていなかった。体に当たってホント、よかった」
この「体に当たってよかった発言」で、球場は歓声と笑いに包まれた。
そんな石原にファンから「愛をこめて」つけられたアダ名が「インチキ」。決して揶揄したものではないものの、本人的には「心外だった」とのちに語っている。
「ひと握りの砂事件」をはじめ、「二度打ちバント」「サヨナラデッドボール」と数々の珍プレーを見せてくれた石原。それは「アメトーーク!」(テレビ朝日系)でも紹介され、アンガールズ・田中卓志らが「優秀な選手だけど、インチキする」とイジッたことで、その伝説は全国区になっていくのだった。(山川敦司)
(※引用元 Asagei plus)