
メジャー球界から11年ぶりに日本球界に復帰する前田健太が、楽天に入団することが決まった。前田は自身のインスタグラムで「自分が、日本球界復帰を明言してからもカープファンの方々、後輩のチームメイトからメッセージをいただきましたが今回は自分の実力不足の為オファーは届きませんでした」と記し、希望はありながらも、古巣・広島から獲得のオファーがなかったことを明かしている。一方で、これと対比されるのが2015年、ちょうど10年前の黒田博樹のカープ復帰だ。黒田は7年間、メジャーで活躍した後に古巣復帰を決意。メジャーでの高額オファーを蹴っての決断だけに「男気エース」と言われ、大歓迎で迎え入れられた。両者の違いは何だったのか。
連絡が密だった黒田
広島の球団関係者が明かす。
「マエケンの日本球界復帰は昨年からささやかれていましたが、広島は獲得する素振りをまったく見せていなかった。同じくメジャーから復帰した黒田博樹(現広島球団アドバイザー)と比較されますが、黒田の場合は渡米後も鈴木清明球団本部長が気にかけて連絡を定期的にしていましたし、広島に復帰する時に備え、背番号『15』を他の選手につけさせませんでした。マエケンの場合は球団と疎遠で、広島時代につけていた背番号『18』も森下暢仁が継承しています。ただ、これはマエケンが悪いというわけではない。選手と球団フロントの距離感はそれぞれですから。メジャーでプレーした選手が日本球界に復帰する際、古巣から獲得オファーが来ないことも決して珍しくはありませんし……」
喜怒哀楽を前面に
広島時代に残した実績だけで言えば、前田は黒田を上回る。最多勝を2度、最優秀防御率を3度獲得し、沢村賞を2度受賞、8年の在籍期間で200イニングを4度クリアしている。現役時代に両投手と共にプレーした球団OBは「黒田さんとマエケンは対照的でした」と振り返る。
「黒田さんは抑えても打たれても黙々と投げる。打線の援護がなくても『点を取られた自分が悪い』とコメントする姿が象徴的でした。一方でマエケンは喜怒哀楽を前面に出す。味方の拙守に呆れた表情を浮かべたり、怒りを露わにしたりすることもありました。これはどちらが良いとか悪いではなく、勝利に対する執着の表し方の違いなのですが……」
野球観が合う
前田が絶対的エースとして君臨していた時は優勝争いから遠ざかっていたが、メジャー挑戦した16年以降に広島は球団史上初の3連覇を飾る。当時取材していたスポーツ紙記者が振り返る。
「マエケンという大黒柱がいなくなり、個々の選手たちの危機感が強くなったように感じました。チーム内の雰囲気も変わりましたね。投手陣は黒田さん、野手陣は新井(貴浩。現広島監督)さんがフォア・ザ・チームの精神を浸透させてナインをまとめていた。黒田さんと新井さんは波長が凄く合う。個人成績に興味を示さず、チームが勝つために何をするべきか常に考えていた。当時の主力選手が怠慢プレーを見せた時、2人が怒りを露わにしていた姿が印象的でした。マエケンは決してわがままな選手ではありませんが、その個性が黒田さん、新井監督の野球観に合うかと言ったら微妙に感じます」
通用するかは未知数
前田はメジャーでプレーしていた際も、広島に抱く特別な思いを口にしていた。球団サイドは決して悪い感情は持っていないだろう。
ただ、シビアな視点で見ると戦力補強としてフィットしないという現実があった。黒田の場合はドジャース、ヤンキースで5年連続2ケタ勝利をマークし、メジャー最終年も32試合登板で11勝9敗、防御率3.71をマーク。同年限りで契約が切れ、ドジャース、パドレスが獲得に興味を示す中で、高額オファーを断って広島に復帰している。一方で前田は直球の球速が落ちてメジャーで結果が残せなくなっていた。今年はタイガースで救援に配置転換されたが痛打を浴びる登板が続き、5月に自由契約に。カブス、ヤンキースの3A傘下でプレーしたが、全盛期の球のキレ、制球力と比べると物足りない。残り35勝に迫った日米通算200勝達成に意欲を示していることから、先発でチャンスが多い球団の方がいい。広島は大瀬良大地、森下暢仁、床田寛樹の3本柱に加え、今季頭角を現した森翔平、玉村昇悟、高太一、常廣羽也斗と1軍定着を目指す若手たちがいる。日本球界で通用するか未知数な前田に先発の1枠を託す余裕がなかった。
シーズンで5、6勝か
一部報道では、前田サイドが「在京球団希望」であることが報じられていた。実際に巨人、DeNA、ヤクルトが獲得に向けて調査をしていたが、スポーツ紙デスクは「残りの野球人生を考えると、一番優先すべきは先発のチャンスが多い球団と考えるのが自然です」と指摘する。
「楽天は2年契約の推定年俸2億円を提示しています。ある球団の編成担当は『前田の投球を米国でチェックしていたけど、日本球界に復帰してもシーズンで5、6勝が現実的な力だと思う。年俸1億円でも高く感じてしまう』と漏らしていました。巨人、DeNA、ヤクルトも同じような見方だったのでしょう」
メジャーから古巣の楽天に復帰した同学年の田中将大は在籍4年間で20勝33敗。直球に力がないため痛打される場面が目立ち、成績が年々下降線に。昨年は1試合登板に終わり、巨人に移籍した。今季は日米通算200勝をマークしたが、10試合登板で3勝4敗、防御率5.00。投球フォームの改造に取り組んでいる途中であることを差し引いても、先発として通用しているとは言い難い。前田に対しても獲得を検討した球団が先発の座を確約できず、複数年契約を提示できないのは妥当と言えるだろう。
復活に懐疑的な見方が多いが、楽天では先発ローテーションで期待されている。日本球界のエースとして活躍した右腕は輝きを取り戻せるか。
(※引用元 デイリー新潮)