すっかり目立たなくなった感がある。広島の石原慶幸。今季で17年目を迎えるベテラン捕手のことだ。
無理もない。25年ぶりのリーグ優勝を果たした一昨年は、ゴールデングラブ賞とベストナインを初受賞。チームだけでなく、屋台骨を支える女房役としても、目に見える形で最高の結果を残した。だが、昨季の個人は大きく下降線をたどる。
出場は前年比29減の77試合。先発に限れば45試合にとどまった。これは、新人だった02年(3試合)に次ぐ少なさだ。前年が華々しかった分、失速感は強い。加えて、石原本人がアピールや弁解を嫌う性格ゆえ、紙面を飾る機会も減った。
「チームとして連覇できたのが何よりですよ。個人成績はすべて自己責任。単純に結果を出すしかない」
出場試合減にはそれなりの理由があるが、ベテランは黙して語らず現実を受け止める。ただ、目立たなくなったからといって、チームへの貢献度が薄れたわけではない。水面下で助言したり、救いの手を差し伸べたケースはあまたある。
周知の例を挙げれば会沢だ。レギュラーの座を争うライバル関係にあるが、求められ、1年前から護摩行に同行させた。鹿児島・最福寺から高野山・清浄心院に場所を移す新春も予定。9歳年下の捕手は、石原を師匠と言ってはばからない。
時には耳に痛いことも言う。昨年末、大瀬良は「今の直球では厳しい」と危機感を露わにしたが、発言にはマスク越しの感覚も加味されている。右腕に請われ、OBの黒田博樹氏と会食をセッティングしたことも。すべてチームの勝利ためだ。
「(若手に)まだ負けないと言うよりも、野球人である以上はもっと打ちたいし、もっと試合に出たい。どこかしらでチャンスはあると思うので、もっと練習しないと」
38歳。今オフも石原は黙々とトレーニングに汗を流す。「チームの勝利ために何ができるか」。広い視野、客観的な視点で全体を見渡しつつ、個人としても巻き返しを誓う2018年。球団史上初の3連覇、34年ぶりの日本一に欠かせない。(江尾 卓也)
(※引用元 スポニチアネックス)