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前向きの象徴【いつも心に新井『さん』を】/カープ女子からのすすめ

2018年6月13日

前向きの象徴【いつも心に新井『さん』を】/カープ女子からのすすめ

今シーズン導入された申告敬遠に慣れてしまった自分に寂しさを感じている同志の皆さま、如何お過ごしですか。あれほど「敬遠球をホームランにしたり暴投したりのドラマがなくなる!」と憤っていたのに案外簡単に受け入れている自分になんだかなあと思う。

もうひとつ導入されたルール「リクエスト」。検証に入るたび中断し流れは悪くなるがジャッジミスが無くなる分遺恨が残らないのはいいかもしれない。悪いことを引っ張らない、忘れて次へ。

6月1日、ロッテ×広島を観戦した。福浦選手の打球が一塁ベースにあたり大きく跳ね、タイミングをなんとかあわせて捕った新井さんがよろけてセーフ判定。そこでリクエスト、検証に入った。その間、カープの選手内でも笑いがおきるほど足のもつれる新井さんの映像が流れた。成績を見ればレジェンドなのになぜこの人はこんなに面白いのだろう。一つ一つのポーズに新井さんだからこその可愛さと可笑しみがある。

新井さんは昔から新井さんではなかった。カープ入団当初(もっと言えば入団前)からいじられキャラだったが新井さんではなかった。

まだ「新井さん」じゃなかった頃

2007年FA権を行使し阪神に行くと決め発表した記者会見以降、タイミングが悪い・間が悪い・要領のよくない面ばかり目立つようになってはいなかったか。本当はカープを出たくないと泣く姿は、ならばFAしなければいいのではと困惑するに充分で、カープが好きだから他球団に行くのは辛いと言いつつ移籍する新井さんはただ新井選手であった。「君のことは愛している」と言いつつ目の前でほかのひとと結婚式あげられてもそれは。結婚してもいい、こちらに愛してると言わなければ。移籍してもいい、本当は行きたくないとは言ってはいけなかった。

阪神時代もいい成績を残したのにゲッツーのイメージの方が大きかったり、弟の方が活躍してると比べられたり。選手会長を務めタイトルを獲りゴールデングラブ賞に選ばれても、慕う金本選手からは失策王併殺王とからかわれもした。新井選手は新井さんになっていく。ここでの「さん」は語尾あげだった。

私の印象に残っている新井選手はカープが初のCSに出て阪神とファーストステージを戦ったときの最後の最後だ。新井選手自身の三振でカープのファイナル行きを決めてしまう。なかなかそんな逆奇跡はない。現所属チームがファイナルに4度目の挑戦するも、前所属チームに敗退、空振り三振でラストの打者になって見送る確率ってどれほどだ。そのくじを引いてしまう新井さん。なんてひとだ。

FAから7年、思う成績が出せなかった新井さんは来季への期待すらない大減俸もあり自ら自由契約を選び、カープに電撃復帰する。後ろ足で砂をかけて出て行ったカープに戻るなんてプライドが無いんかと言われることも新井さんはわかっていたと思う。

新井さんは前を向いてやり直せる象徴だ

新井さんが復帰してすぐの公式戦のこと。その頃私は野球の応援席の漫画を描いていたので相手側に座ることも多々あった。カープグッズは一切つけずカメラだけを持って。

後ろの親子が新井さんを悪く言うのが聞こえた。「新井なんて終わった奴を4番にするような球団」「打てないくせに現役にしがみついてみっともない」「年寄りだから走れもしない」挙句は打たれた抑えの中崎投手に声をかけに行く新井さんをも馬鹿にした。「新井が声かけに行ってる」何がおかしい。笑ってもいいけど嗤うな。一生懸命を嗤うのは、努力してない自己紹介だ。あと、新井さんは終わってないから。

神宮のカープ側立ち見席ではこんな場面も。新井さんがコールされた瞬間「あらいーーー! もどってくんな! おまえはいらん!」試合開始前から酔っぱらって後ろの壁にもたれかかっていたおじいちゃんがヤジる。すると柵前にいたおば様(たぶん私と同年代)がガッと振り向き「うっさいわ! 黙っとき!」と一喝。

戻ってきたんだから仲間だ、今までのことはさて置いてやれと。おじいちゃんが新井さんにヤジを飛ばすたび、怒鳴り返すおば様。途中で寝てしまったおじいちゃんに毛布をかけてやるおば様。なにそのぬくもり。

新井さん復帰に難色を示していた勢力を必死さで納得させた。ただただ努力して真面目に頑張った、打った、優勝に貢献した。黒田投手と共に。北風ではなく太陽方式で、戦争を止める緑の指を持ったのだ。新井さんの語尾はやさしくまるく下がっていく。

新井さんは新井さんになった。真っすぐ必死に野球に取り組んで。

ひとはやり直せる。笑われたっていい。失敗はある、でも次へいける。新井さんは前を向いてやり直せる象徴だ。いける。大丈夫。新井さんをみてみんさい。

恥ずかしくて叫びだしたくなる過去がある、ぎゃーっとわめいて昔の黒い負の感情にとらわれ転がりまわる時、思い出そう新井さんを。失敗は消えてくれないけど新井さんのようにそれを踏まえて次に進もう。カープ女子よ新井さんをむねにいだけ。みんないだけ。

いつも心に新井さんを

私の父は広島生まれ広島育ちのカープファンだ。9年前に癌を患ったが幸いなことに完治してそれなりに元気に暮らしている。ただこの数年認知症がすすんできた。日常生活は母の介助でなんとかできるが、とにかく記憶がおぼつかない。

先月、父母2人して孫の入学式を見るため上京してきた。夜にカープの試合を観ながら母が「お父さんはなあ、キャッチャーやっとったんよ」と言った。父が草野球をやっていたのは褪せた写真で知ってはいた。「お父さん、キャッチャーじゃったん?」と驚いた私の問いかけに「……おう」と答えた父。キャッチャーだった記憶があるのかないのか話は続かなかった。

感情をあまり見せない父が大喜びしたカープの初優勝はまだ79歳のなかにあるのだろうか。優勝したのは覚えてる、と言う。いつの優勝だろう、全部いっしょくたの優勝になっているのかもしれない。

父から私へカープ魂は継がれたのだが、私は自分の子供には継げなかった。子供2人を小学生の頃球場へ連れて行ってはいたものの、中学に上がった時に長女はコーラス部へ長男は科学部へ入り、一緒に行ってくれなくなった。漫画描きのインドア魂は受け継がれたようだ。ああ、私はカープ女子カープ男子を育てられなかったなあ。

かし先日、母からLINEが来た。「あっちゃんのおかげで私もカープを応援するようになったよ」と。なんと私はカープばばを育てていたのだ。

私がアニメーターになるため東京に出てからカープの話相手がいなくなって寂しそうな父と話ができるよう母はなるべく野球中継を一緒に観るようにしたそうだ。私も帰省するたびにマツダスタジアムに連れて行った。まったく野球に興味のなかった母は今では「大瀬良君しか勝ててないが」「カープ残塁ばっかりじゃ」と嘆くほどになった。

この前のLINEには「新井さんやっぱり頼りになるわー」とあって「77歳も新井さんにはさん付けなんじゃなあ」と笑ってしまった。

カープばばの心にも新井さんがいる。おかしくて、しみじみと嬉しい。カープじじの心にもいますように。皆さまに新井さんをインしたい。ぜひ心に新井さんを。(文:石田敦子)

(※引用元 文春オンライン

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