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この人がいなければ優勝は無かった、河田コーチが残した大切なもの

2017年10月10日

この人がいなければ優勝は無かった、河田コーチが残した大切なもの

初見の人は驚くかもしれない。声は大きい、言葉はきつい。そして豪快に笑う。

広島カープの河田雄祐・外野守備走塁コーチの周りには、いつも笑顔があった。人に対して常に真っすぐ。一本筋の通った“昭和”を感じさせた。

連覇を成し遂げた今年、石井琢朗打撃コーチとともに広島を去ることが決まった。

歴代11位の安打数を誇るスター選手だった石井コーチばかり注目されるが、わずか2年で外野守備、そして走塁に革命を起こした河田コーチを失う大きさも、実は、計り知れない。

西武と広島――球界屈指のハイブリッド野球。

河田は1986年に広島に入団。俊足好守の外野手として、赤ヘル野球をたたき込まれた。’96年にトレードで移籍した西武では7年間プレー。その後は西武で指導者となり、リーグ優勝も日本一も経験した。

片岡易之(現・治大)に盗塁王を4度取らせ、秋山翔吾をゴールデン・グラブ賞を獲得するまでの名手に育て上げた手腕を持つ。

広島が3年ぶりにクライマックスシリーズ進出を逃した2015年シーズン終了後に、河田は古巣広島に復帰した。

西武と広島。ともに機動力が伝統的に受け継がれる球団を知る河田だからこそ期待され、そして見事にその手腕を発揮した。

グラウンドでも、グラウンドの外でも全力を尽くす。シーズン中、相手投手の研究に余念がない。本拠地試合の6時間以上前にスコアラー室にこもる姿が何度も見られた。

盗塁、コリジョン・ルール……機動力で優勝に導いた。

常に先を読み、2カード、3カード先の対戦相手の映像をチェックすることもあった。結果、チームは2年続けてリーグダントツの盗塁数を誇り、今季は田中広輔が盗塁王のタイトルを初めて獲得した。

’16年に導入されたコリジョン・ルールにもいち早く対応。春季キャンプから本塁へのスライディング練習を多く取り入れた。三塁コーチとしても豊富な経験と抜群の判断力で、紙一重の得点をもぎ取ってきた。

リーグ屈指の破壊力を持つ攻撃陣を活性化させたのは、紛れもなく河田が改革した「機動力」だった。

孤独になりがちな緒方監督にも直言し、しっかり支えた。

技術的なことばかりではない。25年ぶりの優勝を果たした昨季、チーム内で「河田さんが来たことが大きい」という声をよく耳にした。

緒方孝市監督よりも1歳上で、現役時代は広島で共に戦ったこともある。コーチ就任まで、緒方監督の愛称「めぐ」と呼ぶ間柄。参謀となり「監督」と呼ぶようにはなったが、直接意見することは止めなかった。

新しいアイデアを提案し、雑談で笑い合う姿も見られた。孤立しがちな指揮官をフォローし、距離が生まれがちな若いコーチ陣とのパイプ役となり、首脳陣の潤滑油となった。

首脳陣の中だけではない。選手に対しても、分け隔てない。同じ’15年シーズン終了時に入閣した東出輝裕打撃コーチは言う。

「若手には厳しいけど、主力にあまり言わない首脳陣もいる。でも河田さんは若手に言うことはベテランであろうが言う。筋が通っているから、選手は素直に聞き入れやすいと思う」

人気選手の鈴木誠也にも、しっかりカミナリを落とす。

就任してすぐの’15年秋季キャンプでは、売り出し中の鈴木誠也にカミナリを落とした。各ポジションに選手がついて行われるシートノックで、後逸した鈴木の動きが河田の目には緩慢に映った。

練習後、河田は鈴木を呼び出し「みんなはお前のためだけに練習しているんじゃない!」と叱責。

外野手だけが集まったノックの練習とは違う。守備隊形を指示する捕手もいて、想定したシチュエーションで鈴木の動きに連動して内野手も動く。野球はチームプレー。鈴木の意識と姿勢を正した。

いつも元気にしていたのは、選手への指導のため。

眼力のある目で選手の顔をじっと見つめ、そして大きな声であいさつ。

グラウンドでも声を張り上げ、選手を鼓舞する――当たり前のことだと思われるかもしれないが、長丁場のペナントレースで、その姿勢が1日たりとも変わることがなかった。

たとえ手酷い敗戦のあとでも、球場を去るときには「お疲れ!」と大きな声を出し、そして前を向いていた。「自分に浮き沈みがあれば、選手の浮き沈みを言えない。(いつも)自分に元気があれば、(指導するにも)いいかなと思っていた」

一本筋が通った男はぶれない。

「選手を大人扱いしなければいけない」

若い選手が多い広島でも「選手を大人扱いしなければいけない」と、常に強く意識していた。

選手のタイプによって、言い方を変えるなど工夫した。「聞いてそうで聞いていないヤツもいれば、聞いてなさそうで聞いているヤツもいる」。就任してから外野として気にかけていた逸材の野間峻祥は前者で、鈴木は後者だったという。

(※引用元 Number Web

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