4年目でプロ初安打をマーク
新型コロナウイルス感染により、チームの主力が大量離脱したのが広島だ。菊池涼介、鈴木誠也、九里亜蓮、長野久義ら選手、コーチ、スタッフが陽性判定を受け、濃厚接触者らを含め、「感染拡大防止特例」で登録抹消された選手は計14人。
5月21日の阪神戦(マツダ広島)から予定されていた5試合について、広島は「チームから多数の陽性者が発生した事態を重く受け止めるとともに、感染拡大防止の観点や、管轄保健所と調査を進めながら今後の対応を協議するため」と開催を取りやめ、27日の西武戦(マツダ広島)から再開した。
主軸を欠く苦しい布陣になるが、若手にとっては大きなチャンスでもある。この緊急事態で頭角を現しているのがプロ4年目・中村奨成だ。今季は4月16日に一軍昇格すると、同日の中日戦(バンテリン)で、「二番・左翼」でスタメン出場し、5回に鈴木博志からプロ初安打となる左翼線二塁打をマーク。2打数1安打2四球2得点とチームの勝利に貢献した。
その後は代打、代走での起用が続き本職でない左翼を守っていたが、5月19日の巨人戦(東京ドーム)に「八番・捕手」でプロ初スタメン。
5打数2安打2打点の活躍に加え、リード面でも内角を果敢に突く強気のリードで先発・九里亜蓮を完投勝利へと導いた。その後の試合でも安打を積み重ね、5月30日のロッテ戦(ZOZOマリン)ではクリーンアップの五番でスタメンに抜擢される。だが、順調に階段を上れるほどプロは甘い世界ではない。守備で5盗塁を許し、チームも大敗を喫した。
他球団のスコアラーは中村奨を「捕手に専念させたほうが怖い」と分析する。
「ロッテ戦で5盗塁を許しましたが、肩は強いので後はコントロールですね。もちろん練習で強化しなければいけないけど、試合を積み重ねて感覚をつかむ部分もある。リード面は強気な部分と投手の良さを引き出す繊細さを兼ね備えている。坂倉(坂倉将吾)も打撃の能力が高いが、捕手の能力で言えば、中村奨のほうが伸びしろがあるように感じます」
正捕手をつかむ絶好のチャンス
中村奨は広陵高3年の夏に甲子園に出場して「時の人」になった。PL学園高の清原和博の記録を塗り替える大会新記録の1大会6本塁打をマーク。同年のドラフトで広島と中日が1位で競合し、抽選の末、地元の広島に鳴り物入りで入団した。木製バットへの対応や、たび重なる故障で思うようにいかない時期があったが、俊足と強肩で身体能力は高い。ファームで出場機会を求め、今季から外野や三塁に挑戦していた。
正捕手の會澤翼が下半身のコンディション不良で戦線離脱しているが、同世代の坂倉、石原貴規とライバルは多い。打力を生かすために複数ポジションを守れるに越したことはないが、正捕手をつかむ絶好のチャンスだ。
他球団の首脳陣は「(元巨人の)二岡智宏に打撃スタイルが似ている。ホームランバッターではないが、左中間、右中間を射抜くスケールの大きい打撃でミート能力も高い。木製バットで詰まっても打球が内野手の頭を越える技術を覚えたように感じる」と警戒を強める。
同期にはヤクルト・村上宗隆、ロッテ・安田尚憲、日本ハム・清宮幸太郎らがおり、村上は球界を代表するスラッガーに飛躍した。中村奨も負けられない。(写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)