ボロボロである。広島東洋カープの交流戦最下位が決定。コロナ禍の変則シーズンのため開催されなかった2020年を間にはさみ交流戦最下位は2019年に続いて2季連続だ。しかも5度目の最下位は横浜DeNAベイスターズ(横浜ベイスターズ時代を含む)と並ぶ12球団最多タイとなった。
ただ、ここ最近の弱さは際立っている。13日のオリックス・バファローズ戦(京セラドーム大阪)では9回までに最大4点差を追いついたが、9回に絶対的守護神のルーキー・栗林良吏がT―岡田にサヨナラ右前打を浴びデビューからの連続試合無失点は22でストップ。ここまで何度もチームを救い、最後を締める見事な投球を続けてきた新人ストッパーは当然責められない。
しかしながら終わってみれば今季最長の7連敗(引き分けを挟む)で借金12に膨らみ、リーグでも今季初の最下位に沈んでしまったチームの行く末は気にかかる。何せ開幕から一度も5割に到達できておらず〝ぶっちぎり〟でリーグ最下位に沈んでいたはずのDeNAに抜かれた現実は重い。4月29日から今季3度目の借金生活に入って以降、広島は勝率5割を割ったまま延々と超低空飛行が続きっ放しだ。
広島の交流戦は14日から16日まで本拠地マツダスタジアムで、まだ3試合残っている。他のセ5球団は交流戦日程を終了し、この3日間は試合が組まれていないため広島の結果次第ではもちろん最下位脱出の可能性はある。13日のオリックス戦でサヨナラ負けを喫した後に佐々岡真司監督も「あと3試合、地元なんで必死にやるだけ」と前を向くコメントを報道陣に残していたが、ここから一気に巻き返すと思えるような好材料は残念ながら現時点で見当たらない。
言うまでもなく、現在の低迷は5月中旬にチーム内から新型コロナウイルスの陽性判定者が多数出た影響も大きい。濃厚接触者を含め主力ら計14人が「感染拡大防止特例2021」の適用で登録抹消となり、ただでさえ厳しい状態に追い打ちをかける格好となった。とはいえ、それが全てと結論付けられないことは多くの有識者やカープOB、そして鯉党も分かっている。
12日の試合でもオリックスに1点差負けで苦杯をなめた際、佐々岡監督は「打線が全く機能していない。点を取れていない」などと攻撃陣に苦言を呈した挙句「今は流れが悪い」と評していた。こうした指揮官の半ば愚痴のような試合後の敗戦コメントも実は不評を買ってしまっている。自らの起用法や采配について反省の弁を述べることがほとんど見られず、選手やチーム状況に関しての嘆き節に終始するパターンが非常に多いことで、ネット上でも「そう言う、アンタはどうなんだ」と突っ込まれるケースは少なくない。
ドラスティックな決断に踏み切れ
重鎮の広島OBは佐々岡監督の手腕を次のように指摘する。
「正直に言えば、指揮官として佐々岡監督は優し過ぎるところもある。試合後のコメントも自分についてのことは棚に上げて、ただ単にボヤいているだけだから自信がないように見られてしまう。選手たちに直接面と向かって厳しい言葉をぶつけたり、あるいは鼓舞したりするようなことを行えば、チーム内に違った流れを生み出す形にもつながるはずだが、そういう鬼の一面を見せたという話は残念ながら伝わってこない。
現状のいわゆる〝ソフト路線〟は、これまでのカープの伝統とチームカラーに照らし合わせると、どうしても不適格ととらえざるを得ないだろう。もともと今季のカープは即戦力の新人に加え成長株も有していることで投手陣、野手陣ともに12球団の中でも能力が高い選手が幅広く揃っていると評判が高いはずだった。それがここまで歯車が噛み合わずガタガタになっているのはコロナショックだけが、その要因ではない。やはりベンチのマネジメントに問題がある」
その指揮官の選手起用で「甘過ぎる」とささやかれているのが、迷えるプリンス・堂林翔太に対する〝重用ぶり〟だろう。12日の試合ではスタメン起用したものの3打数無安打で結果を残せずじまい。13日現在、打率1割台に沈んで悪戦苦闘中だ。
「堂林には思い切って二軍行きを命じ、ファームでリフレッシュさせたほうがどう考えてもいい。彼の力は間違いなく必要になる時が来るし、まずは下で調子を取り戻させることが先決。にもかかわらず、今の状態のままグダグダと一軍に置いておけばチーム内に悪循環を生むだけ。そういう観点から考えても、佐々岡監督を筆頭に首脳陣がドラスティックな決断に踏み切れないのは非常に不可解だ」とも前出のOBは厳しい口調で説いている。
かつての正遊撃手・田中広輔も堂林と同じく13日現在で打率2割を切り、目を覆いたくなるようなスランプにあえぎつつベンチ要員に甘んじている。戦力になっていないメンバーを今の苦しい一軍にわざわざ置いて貴重な枠を使えば、単に足かせとなるだけだろう。私情が絡んでいるからなのか、あるいは別の何らかの事情が介在しているからなのか――。いずれにせよ円滑な選手の入れ替えができないのであれば、やはり佐々岡監督を含め首脳陣は「不適格」と糾弾されても仕方がない。
早々と佐々岡監督には今季限りでの退任説までウワサされ始めている。結果が伴わなければ、プロ野球は何を言われても弁明できない世界だ。それでも選手個々のレベルは十分高いはずだけに投打の歯車さえ噛み合えば、まだカープが巻き返せる可能性は残されている。危機感を覚えた指揮官のタクトが今後別人のように冴え渡り、奇跡の進撃で巻き返しを図れるか。鯉党は元気のないチームや不可解な「佐々岡采配」にイライラを募らせながらも、本心では夏場のミラクル反攻を願っているはずである。
(※引用元 WEDGE Infinity)