「野茂ジャパン」にも選出
「彼がうちのチームに入ったのは、小学校4年じゃった。グラウンドでの身のこなしを見た瞬間、天才だと直感したよ。ピッチャーとショート、キャッチャーの3つのポジションをやらせたけど、どのプレーを見てもずば抜けている。全身がバネのようで、マウンドでのバッターとの駆け引きも小学生離れしとった」
こう語るのは広島の少年野球チーム「安佐クラブ」の山田重夫監督だ。
夏の甲子園予選を前に、名門・慶應義塾高校の右腕エースが注目を集めている。彼の名前は前田晃宏投手。広島カープで通算2119安打を記録し、「孤高の天才」と呼ばれた前田智徳(50歳)の息子だ。
冒頭のように、「前田ジュニア」は幼少期から天才の名を恣にしてきた。
小学6年時には広島カープ直属の下部チームに合格し、各球団の対抗戦「NPB12球団ジュニアトーナメント」ではキャプテンとして出場。さらに中学では野茂英雄が全国から才能ある選手を集める「野茂ジャパン」に選出され、アメリカ遠征も経験している。
父は伝説的なスラッガーで、本人も超がつくほどの野球エリート。誰もがその将来を夢見てしまう逸材なのだ。
現在、晃宏選手は高校3年生。最後の夏の戦いに懸ける思いもひとしおだろう。本誌は6月23日、神奈川県にある慶應義塾高校の専用球場にて晃宏選手に直撃取材を行った。
すると、17歳とは思えない大人びた言葉が返ってきた。
「もちろん、父のことは尊敬しています。コロナ期間中も、調整のためにキャッチボールの相手をしてもらいました。でも、小学生のときから、誰かのために野球をしてきたことは一度もありません。ただただ、野球が好きなんです。
僕は投手というのは、打者と1対1の一騎討ちだと考えています。一試合で27回アウトを取るまでの真剣勝負です。マウンドに立てば、ひとりぼっち。どんな偉大な父がいても、自分の力で道を切り拓いていくしかないと思っています」
天才打者のDNAを受け継ぐ前田ジュニア、はたしてその未来やいかに。
(※引用元 現代ビジネス)