ヤクルトと阪神の優勝争いもさることながら、セ・リーグ新人王も過去に例を見ないほど熾烈を極めている。シーズン当初は阪神・佐藤輝明がホームランを量産するなど本命に躍り出たが、後半に大失速。そんななか、広島の守護神・栗林良吏は開幕から安定したピッチングを見せ、ここまで33セーブ、防御率0.37と圧巻の成績をマーク。
また9月以降はDeNAの牧秀悟の打棒が爆発し、打率.296、22本塁打、67打点の好成績を挙げている。さらには、セ・リーグ盗塁王候補の阪神・中野拓夢、ヤクルト快進撃の立役者となっている奥川恭伸も虎視眈々と狙っている。はたして、セ・リーグ新人王に輝くのは? 解説者5人に見解を聞いた。※成績はすべて10月14日現在
西山秀二氏(元広島など)
前半戦の活躍からいけば、佐藤輝明(阪神)がダントツだったと思うのですが、後半戦にまさかの大失速があり、一気に形勢が変わってきました。栗林良吏(広島)は安定感あるピッチングで広島の絶対的守護神に君臨し、牧秀悟(DeNA)もホームランを20本台に乗せ、3割近い打率を残している。また、2年目の奥川恭伸(ヤクルト)も好投を続けて9勝をマーク。チームの快進撃のキーマンになりました。
これだけ多くの選手が、しかもこんなに高いレベルで新人王を争うというのは、これまでになかったんじゃないでしょうか。誰が選ばれても不思議ではないですし、それぞれちゃんとした理由がある。間違いなく票は割れると思いますが、私なら栗林に投票します。
これまで49試合に登板して、圧倒的な数字を残しています。チームはBクラスですが、もし栗林がいなかったら最下位の可能性もあったのではないでしょうか。とにかく、これだけ失敗しないクローザーを見たのは久しぶりです。チームに安心感を与えたという意味でも、栗林が新人王にふさわしいと思います。
藪恵壹氏(元阪神など)
佐藤輝明(阪神)が新人王を獲るには、30本塁打がひとつの基準になるんじゃないかと思っていました。実際、シーズン当初のペースならクリアしていたでしょうし、キヨさん(清原和博)の新人最多本塁打記録(31本)も抜く勢いでした。しかし、59打席連続無安打はあまりにも痛かった。二軍落ちも経験して、試合に出ない日も多かったですし、ちょっとイメージが悪いですよね。
そうなると栗林良吏(広島)が大本命になるでしょうね。ここまで33セーブも立派ですが、防御率0点台というのは驚異的です。それに東京オリンピックの活躍もありましたし、シーズンを通して安定した活躍も印象がいい。票は集まるでしょうね。
ダークホースは中野拓夢(阪神)です。打率は.2741で、盗塁27はリーグトップ。佐藤とともに今シーズンの阪神の快進撃を支えたひとりですし、チームにフィットしたという点では佐藤よりも上でしょう。失策は17とリーグワーストですが、それでも長年固定できなかった阪神のショートストップの座を射止めたということは高く評価してもいいと思います。
秦真司氏(元ヤクルトなど)
栗林良吏(広島)が頭ひとつ抜けているように思います。成績もさることながら、投球内容がすばらしい。栗林のいいところはストレートが強く、フォークのキレもいい。しかも、ストレートと同じ軌道からストンと落ちるから、バッターは見極めが難しい。ウイニングショットを持っているピッチャーは強いですし、栗林のピッチングは新人らしからぬ落ち着きがあります。
栗林を追うのは、牧秀悟(DeNA)と奥川恭伸(ヤクルト)です。牧はサイクル安打も記録しましたし、とくに9月以降の活躍が目立っています。本塁打も20本以上放ちましたし、もし3割に到達することがあれば、逆転するかもしれないですね。
奥川についてはヤクルトが優勝すれば……という条件つきですが、この勢いだと可能性は十分あると思います。ここまで大事に使われながらも、16試合に登板して9勝3敗。とにかく制球力とリズムがいい。次の登板で2ケタに到達することがあれば、さらにチャンスは出てくると思います。
岩本勉氏(元日本ハム)
新人王は勝利にどれだけ貢献したのかということも重要になってきますので、優勝したチームの選手が有利になるのではないでしょうか。ヤクルトが優勝するなら奥川恭伸が筆頭候補になるでしょうし、阪神なら佐藤輝明、中野拓夢の名前が挙がってくると思います。
ただ、栗林良吏(広島)の成績はズバ抜けてすごい! ルーキーで33セーブ挙げることも驚きですが、防御率は0点台ですからね。しかも東京五輪では侍ジャパンの守護神として金メダル獲得の立役者となった。チームは優勝に絡めなかったですが、栗林は存在感を示した。そこはポイントが高いと思います。
それにしても今年の新人王争いはレベルが高い。数字を比較するといっても、投打で基準が違いますし、先発と抑えもしかりです。そうなると最終的にどれだけインパクトを残せたか……にかかってくるでしょう。そうなると残り試合はわずかとなりましたが、どこまでアピールすることができるのか。いずれにしても、僅差の戦いになると思います。
吉見一起氏(元中日)
本当に難しいです。投票する記者の方がどこに注目して、どの成績を評価するかによって大きく変わってくると思います。そんななか、私は牧秀悟(DeNA)を推します。ここまで打率.296、22本塁打、67打点を挙げていますが、例年ならダントツで新人王に輝いている成績です。
牧はとにかくタイミングの取り方がうまく、リスト、背筋も強い。自分のポイントで打てなかった時でもカバーできる体の強さと技術がある。しっかりバットを振れますし、ヒットゾーンが広く、広角に打てるのが魅力です。いい意味で、新人らしくないバッターです。
牧の対抗になるのは、栗林良吏(広島)だと思います。30セーブ以上挙げたというのは大きなアピールになるでしょうし、シーズンを通してクローザーという過酷なポジションをこなしたことは賞賛に値します。
シーズン当初は佐藤輝明(阪神)が独走するのかと思いましたが、59打席連続無安打など一気にペースダウン。一方で、牧は最後まで大きく落ち込むことがなかったというか、調子を上げてきました。優勝争いしていれば確実だったと思いますが、プロ1年目の野手が残す数字としては圧倒的だと思います。
(※引用元 web Sportiva)