この日は先制ソロを放った3番・西川に、2度も犠打を命じて決勝点をもぎ取った。2試合で7犠打。それでいて広島・新井監督のタクトからは、手堅さではなく攻めの空気しか伝わってこない。
「どうしても追加点がほしかったので、龍馬(西川)にはバントをやってもらいました。攻めていけるところは、どんどん攻めていきたかったのでね。後手後手に回るのが嫌だった。スピード感を持ってやろうと思ったので」。第1戦はアッと驚く三盗とスクイズで劣勢をはね返し、第2戦では3番の犠打だけでなく、4番にも代打を送った。
それ以上に僕が驚いたのは、試合中に場内にも発表された第3戦の予告先発・九里である。幻に終わったとはいえ、いわば甲子園行きを懸けた決戦だ。しかし、九里は第1戦でリリーフ起用し、1イニング2/3を投げている。もつれれば総力戦だと腹をくくっていたのだ。
攻めの継投はこの日もあった。ブルペンには8人。ただし、勝ちパターンの矢崎が特例2023で抹消された。手薄にもかかわらず、新井監督は攻めた。6回1死三塁で、先発・森下から大道への継投を決断した。
「彼(大道)の一番いいところは、腕を振って強い真っすぐを投げること」。その期待通りに大道は全球ストレートで押し、大田を二飛、牧を右飛にねじ伏せた。先勝している。ルール上、引き分けや雨天中止も広島の利となる。つまり守る手もあったはずなのに、最後まで攻め抜いた。
2日間、囲み取材に加わったが、ネガティブなことは一切言わない。印象的だったのは「任せたから」「頼んだ」という言葉の多さだ。打席やマウンドに送り出すまでの準備は求めても、そこから先は選手の仕事と割り切っている。若手が結果を出せば「成長した」と目を細め、ベテランが仕事をすれば「経験値が違う」と持ち上げる。
「全員野球で高校球児のように戦ってきます」
セ・リーグのCSファーストステージで、2位が勝ち上がったのは8年ぶり。いざ甲子園へ。全員で戦い、全員で笑う。それが新井監督のやりたかった野球なのだ。
(※引用元 中日スポーツ)