その守備は、ため息をもらす敵軍ファンを含めて球場全体を魅了する。4月16日の本拠地・マツダ広島でのヤクルト戦、6回一死一、二塁。菊池涼介は濱田太貴の二塁後方の打球を、右翼方向にスライディングしながら鮮やかにキャッチ。
直後に田中広輔の満塁本塁打で同点に。5点差からの逆転勝利の一翼を担った。新井監督も「打点1(に値する)でしょ」と、うなった。
好プレーの例を挙げたら、キリがない。2020年に二塁手として史上初のシーズン無失策を達成し、連続守備機会無失策記録(569)のプロ野球記録を持つが、天然芝の本拠地でプレーするからこそ、その価値は数字では計り切れない。
今季はセ・リーグで山本浩二氏を超える連続年数、宮本慎也氏ら4人の受賞回数を上回る11年連続11度目のゴールデン・グラブ賞の受賞が期待される。プロ12年目、33歳にしても衰えることのない探究心。
「納得している人は、現役の人ではいないと思う。『まだまだやれる』『できる』『やらなきゃいけない』は毎年思ってやっている」。その思いが、唯一無二のスペシャリストの地位を不動のものにしている。
もちろん守備だけではない。現役をともにした指揮官の下、今季はリードオフマンとして打線も引っ張る立場だ。4月4日の阪神戦(マツダ広島)では激走で2つの内野安打をもぎ取るなど、ヘッドスライディング4連発。
ベテランの気迫が、雨天中止を挟んで6日からの5連勝の呼び水となった。「背中で引っ張っていきながら、秋山(秋山翔吾)さんや會澤(會澤翼)さんの力を借りてみんなで戦っていきたい」と、鯉の忍者は頼もしい。(写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)