前田健太は“原監督好み”
巨人が今オフにフリーエージェント(FA)となるツインズの前田健太(35)の獲得に向けた調査を行っている。昨季も課題だった投手陣は今季も不安定で、チーム防御率はセ・リーグ5位の3.65。日米通算157勝の前田が加入すれば、来季の先発陣整備は大きく前進する。原辰徳監督(64)は来季が3年契約の最終年。
今オフに続投が決まれば進退が懸かるシーズンになるだけに、先発投手の補強は切実だが、一枚岩になれない球団事情がネックとなり、本格的に獲得に乗り出したとしても望みは薄いようだ。
長年エースだった菅野智之(33)は今季、オープン戦で訴えた右肘の張りの影響で開幕から出遅れ、初登板は6月にずれ込んだ。復帰2戦目では打球を足に受け、またも戦列を離れた。先発陣では戸郷翔征(23)がリーグトップの8勝と孤軍奮闘状態だ。
NPB球団元監督はこう指摘する。
「菅野は既にピークを過ぎている。2桁勝利どころか、1年間ローテを守ることさえ計算できなくなった。元来、けがに弱いところもあり、今後は力が落ちるのをどれだけ抑え、投球術でカバーできるかがテーマになってくる。もちろん次代のエースには戸郷が期待されるのだが、まだ若いだけに、一人に全てを負わせるのは酷。原監督は現状のような外国人ではなく、実績がある日本人投手は喉から手が出るほど欲しいところだろう」
前田は2021年9月にトミー・ジョン手術を受けるまでは広島時代を含め、大きな故障がなかった。ドジャース時代には先発だけではなく、リリーフもこなすタフネスぶりを発揮した。
「ドジャースとの契約時には体調面に難癖を付けられ、年俸の基本額を抑制され、出来高が厚くなった不利な契約を結ばされた。しかも、先発で出来高の獲得ラインに近づくと、球団が獲得せさせまいとリリーフに回される不遇な起用を強いられた。そんな中でフル回転してきただけに、原監督好みの『うまい』ではなく『強い』選手。培ってきた経験は若手が多い巨人の投手陣の手本となるはず」(同元監督)
秋山翔吾で広島復帰へ地ならし?
前田は、現役最後は日本で終えたい意向を持っている。広島で球界を代表する投手に育ち、ポスティングシステムでメジャー移籍した経緯を踏まえると、日本復帰なら広島が最有力とみられている。
同様に広島のエースだった黒田博樹は2015年にメジャーから古巣に復帰。翌16年にはチームの25年ぶりのリーグ制覇に大きく貢献した。
「黒田を念頭に、前田も力があるうちに日本に戻ってきたいようだ。秋山(翔吾)が昨季途中に縁もゆかりもない広島に移籍したのは(同学年で親交が深い)前田の助言があったから。今オフはメジャーで好条件の契約を探った上で、好感触を得られずに日本復帰となれば、広島以外に選択肢はないのではないか」(米大手マネジメント会社の代理人)
他のNPB球団ではソフトバンクも前田をリストアップしているもようだ。昨オフに近藤健介を7年以上総額60億円規模の契約で獲得した資金力をバックに切り込んできたとしても、形勢は広島が圧倒的優位に立っている。
巨人は昨オフも米国帰りの有原航平をソフトバンクにさらわれるなどした。今や巨人ブランドは地に落ち、編成権を含む全権を掌握する原監督の権力が強大すぎることなどを理由に、近年はFA選手が入団を敬遠する傾向にある。
桑田真澄氏は原監督と不仲で宝の持ち腐れ
ただし、「マエケン獲り」に関してはチームに切り札的人材を抱えている。今季からファーム総監督を務める桑田真澄氏(55)である。
大阪・PL学園高出身の前田の母校の大先輩に当たる。前田は幼少期からその野球センスに憧れを抱き、PL進学の決め手にしたほどだ。上下関係が絶対のPLの先輩後輩で、巨人が獲得交渉に乗り出した際に“後方支援”の役目を託すにはもってこいのはずだが……。
かねて桑田氏は原監督と微妙な関係なのだ。投手チーフコーチになった昨季、投手起用を巡り、目先の勝負を重んじる原監督と、中長期的な視点に立つ桑田氏は意見が対立した。桑田氏は退団も囁かれた昨オフ、球団の意向もあってユニホームを着ないファーム総監督への配置転換で残留に至っている。
「桑田さんは巨人での現役晩年から(当時監督の)原さんと折り合いが悪かった。(06年に)最後は桑田さんが原さんに断りなく、球団のホームページ上で退団を表明した(後にパイレーツに移籍)。(21年の)指導者としての巨人復帰は原監督のたっての希望だったが、1年間1軍で一緒にベンチにいると、野球観の相違が顕著になった。今の2人の関係では原さんが桑田さんに前田との交渉時の仲介役は依頼しづらいし、しないだろう。万が一(今季不振で)原さんが辞め、桑田新監督にでもならない限り、前田獲得の可能性は出てこないのではないか」(チーム関係者)
現状では、前田を口説く存在になり得る桑田氏も、巨人では宝の持ち腐れになりそうだ。(記録は7月3日現在)
(※引用元 デイリー新潮)