「フライボール革命」理論は、ゴロより飛球の方が長打の確率が高まるとして米球界で脚光を浴びている。
日本は犠打やゴロで走者を次の塁に進める「スモールベースボール」で世界と渡り合ってきたが、正反対の理論になる。日本のプロ野球でも、意図して飛球を打ち上げる選手も出てきており、野球の戦略が変わりつつある。
大リーグでは、データに基づいた極端な守備シフトが主流でゴロによる安打の確率が低くなっていた。
一方、カメラやレーダーで選手やボールの動きを分析する機器が導入され、打球速度が158キロ以上で角度が30度前後のとき、8割以上が安打になることが判明した。これに着目したアストロズが意図的に飛球を打って本塁打を量産。2017年のワールドシリーズを制し「フライボール革命」が広まった。
日本の打撃指導は「ボールを上から強くたたく」が常識だった。ゴロを打ち、相手守備の失策や悪送球を誘う。また、右方向に転がすことで、次の塁に走者を進める狙いもあった。
対して、飛球を打つには、バットを下から出さなければならない。ボールの回転を研究している国学院大の神事努准教授は「単にボールの芯の下を打って、バックスピンをかける方法では打球速度が落ち、ポップフライになる。正しい打ち上げ方が重要」と指摘する。
神事准教授が監修する「BASEBALL GEEKS」によると、直球を打つ場合、最大限の飛距離を出すには「地面に対して19度上向きのアッパースイングで、ボールの芯の6ミリ下側をたたく」ことが必要になると分析。
また158キロ以上の打球速度を出すには、脂肪を除いた体重が65キロ以上(例えば、体脂肪15%の人は体重74.8キロ以上)との条件があり、神事准教授は「プロ野球選手の半数以上が当てはまる」と指摘している。
ソフトバンクの柳田は17年からアッパースイング気味の打法を取り入れ、長打率は16年の.523から17年が.589、今季が.661と大幅に上がり、首位打者にも輝いた。
6度の本塁打王に輝いている西武の中村も「ボールの芯の少し下を打つように意識している」と話す。神事准教授は「日本も『フライボール革命』が起これば、間違いなく得点力は上がる」とみている。
(※引用元 産経新聞)