新型コロナウイルス拡大の影響でシーズン開幕時期がなかなか決まらないプロ野球。
今回は、プロ野球の「乱闘」についてです。
火事と喧嘩は江戸の華。プロ野球においても乱闘は決して褒められた行為ではありませんが、観衆がエキサイトして、不謹慎ながらも「いいもん見たな~」と満足するのは間違いないところです。闘う男達の感情が爆発する瞬間、不謹慎ながらもスタジアムが熱くなるのは避けられません。
昨年5月24日、東京ドームで行われたジャイアンツ・カープ戦の七回一死一塁でした。一岡竜司の投じたボールが代打・中島宏之の左肩を直撃後、頭部をかすめました。一岡は頭を下げ、謝罪しますが、興奮した中島はマウンドに向かおうとします。両軍がベンチから飛び出し、不穏な空気が漂う中、一岡は危険球退場となりました。
26日の同カードでは、中島の登場時にカープファンから大ブーイングが注がれ、カープの菊池涼介が「中島さんの打席の時にブーイングが起こったのが残念だった。こちらが当てているのに」と試合後にコメントするなど、尾を引く事態に。しかし、昔ながらのプロ野球ファンはついつい、こうつぶやいてしまうのです。
「昔はプロ野球で乱闘なんて、日常茶飯事だったよ」と。
西武・東尾修と近鉄・デービスの因縁、西武・清原和博がロッテ・平沼定晴に食らわしたバット投げからのジャンピング・ニーパッド、さらには熊本の夜、巨人・クロマティが中日・宮下昌己に繰り出した右ストレート…。目を閉じれば浮かんでくる「名勝負」の数々。
なぜ、乱闘は絶滅危惧種になったのでしょうか。ここでは3つの要因を挙げてみたいと思います。
<1>携帯電話の普及
昭和の時代はグラウンド内でも、ベテラン選手やコーチ陣から「ヨソの選手とは口をきくな」と指導されたと言い伝えられます。ところが現在、試合前に高校や大学、社会人時代の先輩やトレードなどで移った選手などをキョロキョロ探して、両軍ベンチを行き来するのは見慣れた光景です。
「携帯電話の普及がきっかけだった」と指摘するのは元プロ野球選手の評論家氏。電話番号やメールアドレス、LINEのIDを交換すれば、簡単に他球団の選手に連絡できるようになった。お前、今どこで飲んでるの?今から、こっちに来ない? 球界はタテ社会。アマ時代の先輩からそんなお誘いがあれば、絶対に断れません。そんな「仲間」と乱闘なんて…。
おとなしくなるはずです。
<2>侍ジャパンの創設
プロ選手によるトップチームが常設化され、メンバー入りはプロ野球の一流にとってのステイタスになりました。五輪やWBCなど、大会中は同じ釜のメシを食い、親交を深めます。
場合によったら、シーズン中も軽く飲みに行きますか…となる。主力選手同士が仲良しこよしになってしまえば、乱闘も起こしにくい空気が自ずと醸成されます。
<3>他球団との合同自主トレブーム
今ではオフの期間、他球団の選手と合同自主トレを行い、技術交流をすることも当たり前になっていますが、前述の評論家は「昔じゃ考えられないよ。なんで自分のメシの種を相手に明かさなきゃなんないの。意味が分かんない」と呆れ顔です。
3点、全てにおいて言えるのは「選手同士が仲良くなりすぎた」ということでしょうか。スポーツマンシップに則って正々堂々とプレーするのは大いに結構。
しかし、もう一つの魅力である「決闘」のにおいが薄れてしまうのは、寂しく感じられるファンの方も多いかもしれませんね。
(※引用元 CoCoKARA)