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坂倉将吾が追求する実戦勘、試合に出なくても成長した『レアケース』

2020年10月9日

坂倉将吾が追求する実戦勘、試合に出なくても成長した『レアケース』

人はまだ見ぬものに、ロマンを感じるものだ。プロ野球の新戦力にも、同じような感覚を抱くファンもいるに違いない。とくに優勝の可能性が遠くかすみ、目標を見出しにくい球団のファンならなおさらだ。

2016年からリーグ3連覇を果たした広島は、今年最下位争いに身を置き、多くの若手が出場機会を得ている。

中村奨成(21歳)や羽月隆太郎(20歳)のほか、育成出身の大盛穂(みのる/24歳)がブレイクし、藤井黎来(れいら/21歳)も一軍に昇格。また、プロ6年目の桑原樹(24歳)、2年目の林晃汰(19歳)も一軍デビューを果たした。

中継ぎ陣も塹江敦哉(ほりえ・あつや/23歳)やケムナ誠(25歳)、島内颯太郎(23歳)と顔ぶれが大きく変わった。

台頭の兆しが見える若手のなかでも筆頭株は、高卒4年目の捕手、坂倉将吾(22歳)だろう。ほかの若手とは違い、すでに一軍での経験も豊富で、ある意味”未知の戦力”ではない。ただ、スタメン捕手という点では、まさしく”未知の戦力”だった。

昨年まで51試合に出場したが、スタメンマスクは一度もない。打力を評価され、代打での途中出場がほとんどで、スタメンで出場した4試合はすべて外野手としての起用だった。

そんな坂倉の環境は1年で大きく変わった。

開幕6戦目の6月25日の巨人戦で初めて捕手としてスタメン出場すると、正捕手・會澤翼に次ぐ39試合でマスクを被る(10月8日現在)。

捕手という経験がモノをいうポジションで、プロ初先発マスクからこれだけ出場数を増やした選手は、近年の広島では珍しい。

石原が初めてスタメンマスクを被った2002年の出場はわずか4試合にとどまり、會澤が初めて一軍デビューを果たした2009年は捕手としての出場は9試合だけだった。

倉義和バッテリーコーチが推し進める世代交代の波に乗り、坂倉は一気に2番手捕手の地位を掴んでみせた。

プロ入り前、日大三高時代の坂倉は決して全国区の選手ではなかった。

「僕は目立たない選手だった。小、中、高と”地域では”とか”東京では”というレベル。ジャパンにも無縁でしたし……。だからプロでは、(アマチュア時代から)有名な選手よりも早く(一軍に)上がりたいという思いが強かった」

道のりは一歩一歩の積み重ねだった。2017年に鈴木誠也以来となる高卒1年目野手として一軍昇格を果たした。それに満足したわけではなかったが、2年目の2018年は大きな成長を遂げることはできなかった。

2019年1月には先輩の鈴木誠也に頼み込み、ソフトバンク内川聖一の自主トレに参加。するとその年、代打や外野手として起用されるなど打撃面で大きな成果を上げた。

今年1月は、自ら関係者に頼みこみ、巨人・炭谷銀仁朗の自主トレにひとりで飛び込んだ。理由は「捕手として試合に出たい」と、ただそれだけ。「人見知り」と自認する坂倉だが、目標を達成するために必要だと思うことがあれば躊躇しない。

試合に出てない時でも、たとえばイニング間の投球練習で、防具をすべて着用してボールを受けるなど実戦勘を養った。出場機会が急増した今季もそれは変わらない。

坂倉と同じように高卒1年目から一軍出場を果たした東出輝裕二軍打撃コーチは言う。

「若い選手は試合に出ることで成長する。でも、坂倉は試合に出られなくても成長した珍しいケースだと思う」

明確な目標設定と、自分自身を客観視しながらやるべきことを持ち続けたことが、成長をあと押ししたのかもしれない。

スタメンマスクが増えた今シーズンも試合前の練習量は変わらない。キャッチングにブロッキング、スローイング……なかでも繰り返されるスローイング練習はこちらが消耗を懸念するほどの頻度で行なわれている。

打率3割をキープする打撃に非凡さを示す一方で、見えてきた課題もある。とくにキャリアの浅い守備面ではリーグワースト2位の捕逸を記録するなど、数字に表れない部分も含め、まだまだ會澤との力の差を感じさせる。

それでも今年の経験は、必ず財産になるはずだ。もちろん、それはほかの若手選手にとっても同じである。

新しい戦力はいいところばかりに目が留まる。だからこそ、最初は期待値しかないように映るものだ。だが、出場を重ねていくことで欠点が露呈されていく。それこそ、プロとしてまずは乗り越えなければいけない壁だ。

そこで出場機会を減らし、批判にさらされることもあるかもしれない。勝ちパターンに入っていた投手はポジションを奪われ二軍に降格し、しばらく1番で起用されていた大盛も三振の多さからベンチスタートとなることも増えてきた。

そういったサイクルを乗り越えた選手たちが、主力選手へと成長していくのだ。

若い選手にとって一軍での経験は大きな糧となる。ただ、プロ野球は年数を重ねたからといって出場が与えられる年功序列の世界ではない。ポジションは自らの手で勝ち取らなければならない。

この世界で生き抜くために求められるものは、ロマンでなくリアルだ。自身の現在地を理解し、明確な目標を定めて突き進むしかない。

坂倉のように次のステージに進む若手は誰か──。若鯉たちにとって、消化試合など1つもない。(前原淳)

(※引用元 web Sportiva

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