広島は佐々岡真司監督が就任し、昨シーズン(4位)からの巻き返しを図るも叶わず5位に終わった。勝率も、2015年以来5年ぶりに5割を下回る4割8分1厘にとどまり苦しい一年だった。
鈴木が5年連続打率3割&25本塁打以上を達成するも、西川と會澤が離脱
チームは5位と低迷したものの、チーム打率.262(リーグ2位)、523得点(同2位)と打撃面の数字は決して悪くない。
主砲の鈴木誠也が打率.300(430打数129安打)、25本塁打、75打点と結果を残した。5年連続で打率3割、25本塁打以上は王貞治、落合博満、小笠原道大に続いてプロ野球史上5人目の快挙となった。3打数3安打を達成すれば打率3割に乗るという11月10日のヤクルト戦では、1番で起用されると第1打席から見事に3打席連続安打を記録し、お役御免。「日本の4番」の貫禄を見せた。
堂林翔太は2012年以来8年ぶりに規定打席に到達した。序盤戦では首位打者を争う活躍を見せたほど。最終的には打率.279(401打数112安打)に落ち着いたものの、ここ数年は苦しんでいただけに、本人にとっても復活は大きい。
加入2年目の長野久義も95試合の出場で打率.285(267打数76安打)とまずまずの働き。とくに10月以降は打率.360(75打数27安打)、5本塁打と大当たり。健在ぶりを見せつけた
若手では、育成から這い上がってきた大盛穂がプチブレイク。7月24日に初めて一軍登録されると、一時は1番で起用されるなど一度も降格することなくシーズンを戦い抜いた。2021年シーズンもレギュラー争いに加わってきそうな新星だ。
守備面では菊池涼介が二塁手としては初の守備率10割を記録。高卒2年目の羽月隆太郎にはまだまだポジションを渡せない。そんな気概を感じさせる活躍だった。
一方で、西川龍馬、會澤翼といった主軸が故障により途中離脱したことは痛手だった。とくに西川は登録を抹消される8月末まで打率3割を超え、1番や3番といった重要な打順を任されていただけにその穴は大きかった。
期待されていた若武者の小園海斗は一軍で3試合の出場にとどまった。小園はまだ高卒2年目で、二軍では最終的に打率.305(249打数76安打)と結果を残したが、ルーキーイヤーから一軍で58試合に出場し、打率.213(188打数40安打)、4本塁打を記録しただけに、今季は少し物足りない。2021年シーズンの活躍に期待がかかる。
九里亜蓮が初の規定投球回到達、エース大瀬良が離脱
チーム防御率4.06.はリーグ5位と投手陣は苦しんだ。既存戦力の中で結果を残したのが、九里亜蓮と遠藤淳志のふたり。大卒7年目の九里はこれまで先発、中継ぎと両方の役割をこなしてきたが、今シーズンは先発に専念。チーム最多の20試合に先発し8勝をマークした。
初めて先発ローテーションを任された遠藤も、九里に次ぐ19試合に先発し5勝を挙げている。107回と規定投球回には届かなかったものの、防御率3.87は高卒3年目としては上出来だろう。
中継ぎ陣では塹江敦哉とケムナ誠が躍進。両投手ともこれまでに一軍での実績がないなかで40試合以上に登板した。塹江は防御率4.17とやや打ち込まれる場面もありながら、チームトップの19ホールドを記録。勝ちパターンに入ったのは自信になったはずだ。
一方、2年連続で開幕投手に抜擢された大瀬良大地は苦しんだ。開幕戦から2試合連続で1失点完投勝利をマークするも、以降は思うように成績が伸びず2度の登録抹消。2度目の登録抹消から10日後となる9月16日に右ひじの手術を受けシーズンを終えた。エースとして臨んだシーズンで11試合の登板に終わり、5勝4敗、防御率4.41は期待を裏切ったといっても過言ではないだろう。
また昨シーズン7勝を挙げ、開幕2戦目の先発を任された床田寛樹も今シーズンは5勝8敗、防御率4.93と苦しんだ。およそ1ヶ月の離脱もあり、投球回数が76.2回にとどまったのはチームとしても苦しかった。
新戦力では森下暢仁が圧倒的な存在感を放つ
新戦力ではドラフト1位の森下が凄まじい活躍を見せた。開幕3戦目の先発に抜擢されると、7回無失点の好投。登板2試合目で初勝利をあげると、大きな故障なくシーズ終了まで走り抜いた。
そのうえで規定投球回にも到達し、10勝3敗、防御率1.91は立派な数字。最優秀防御率のタイトルを大野雄大(中日・防御率1.82)と最終盤まで争った。チームでは2014年の大瀬良以来6年ぶりとなる新人王を受賞している。
野手ではドラフト2位の宇草孔基が一軍デビューを果たした。二軍ではリーグ4位となる打率.282(221打数62安打)を記録しシーズン終盤に一軍へと昇格。即スタメン起用された。しかし、死球による骨折で13試合の出場にとどまり、打率.256(43打数11安打)と目立った成績を残すことはできなかった。左翼の守備は不安定な部分もあり課題は多いが、現時点で確固たるレギュラーがいないため、定位置争いに加わることになりそうだ。
外国人選手は苦しんだ。野手のピレラ、投手のDJ.ジョンソンとスコットら3名の新外国人は誰ひとりとして結果を残すことができなかった。ピレラは1年で退団となり、ジョンソンはシーズン途中に楽天へとトレードされている。
唯一残留したスコットも7試合の登板で防御率15.75と期待外れの結果だった。抑え候補としての加入だったにもかかわらず、開幕から5試合の登板で3試合に失点。その後も立ち直ることはなかった。二軍では9月半ばから先発として等版しており、新たな起用法を模索している。来シーズンは抑えや中継ぎではなく、先発としての起用が濃厚だ。
来季は大瀬良、西川の復活が鍵
カープは例年通りFA選手の獲得はなく、ドラフトで指名した即戦力候補、そして新外国人選手を既存戦力に加えることになる。
投手陣の立て直しが急務だったこともあり、先発ローテーションに加わりそうな新戦力を複数補強している。
ドラフトでは1位で即戦力右腕の栗林良吏(トヨタ自動車)を獲得した。北別府学らが背負った背番号「20」を与えたことからも期待のほどがよくわかる。今年の森下と同様、故障がなければ開幕ローテーションに入ってくるはずだ。
新外国人ではリトアニア出身の身長190センチの大型右腕・ネバラスカスが加入した。ネバラスカスはMLBでは中継ぎとして起用されており、マイナーリーグでも先発したのは2015年が最後となっているが、現時点では先発候補と見られている。その他には中継ぎ候補としてバードが加入している。
野手では外国人のクロンが加入した。2019年にはMLBで39試合に出場し6本塁打を放った。一塁を守る長距離砲候補となっており、鈴木とともに主軸となることが期待されている。
新戦力を踏まえた上で現時点の陣容を見ると、投手陣は大瀬良の復活にかかっている。9月に手術をした大瀬良は来春の開幕には間に合うという。大瀬良、森下の2枚看板が揃うと大型連敗はなくなるだろう。そこに栗林とネバラスカスが加わり、今シーズン飛躍した遠藤と九里が同じような投球を見せることでローテーションは安定する。
中継ぎ陣は抑えのフランスアとセットアッパーの塹江につなぐ7回が鍵。3連覇の立役者でもある中崎翔太や今村猛が戻ってくると心強い。
(※引用元 SPORTING NEWS)