昨年末、2017年限りで現役を引退した元広島の江草仁貴氏にインタビューをする機会があった。現役時代には後輩をよく食事に連れていくなど、面倒見の良いことで知られていた江草氏。年下の選手とともに時間を過ごした意図を尋ねると、笑みを浮かべながら答えた。
「同じ歳の永川(勝浩)ともよく話すんですよ。『俺たちの給料は、そういうことも含めてもらっているんだよな』って」
現役時代には阪神、西武、広島と3球団に所属し、15年間で通算349試合に登板。タフな救援左腕として存在感を発揮した江草氏。ベテランは自分の仕事を果たすだけではなく、自らの経験や知識を後輩に伝え、チーム全体の力を高めることも役割の一つだと考えていたのだ。
現役最終年となった17年は一軍登板はなかったものの、ファームではチーム2位の35試合に登板。練習では率先して声を張り上げ、盛り上げ役を買って出ていた。特にこだわっていたのは登板前の準備。デーゲームの際には早朝からウエートルームにこもるなど、人目につかない部分でも手を抜くことなく、練習に向かう姿勢でも手本となっていた。
先発、中継ぎともに左腕不足が指摘される広島だが、中村恭平や戸田隆矢、塹江敦哉、高橋樹也、高橋昂也ら高いポテンシャルを秘めた若手サウスポーは多い。江草氏の教えを吸収し、飛び出す選手は現れるか。18年、広島左腕の競争に注目だ。(文=吉見淳司 写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)