シナリオが狂い始めた
開幕して間もないのに、広島カープの次期監督の名が一部で取りざたされている。金本知憲(52)の名前が出回り始めたというのだ。開幕三連戦の内容などとは関係なく、実は年明けごろにはその名が浮上していたのだという。広島には、オーナーの意向からか、「広島一筋の人間しか監督になれない」という不文律がある。広島を出て10シーズンを阪神で過ごし、その後に監督を務めた金本へのオファー説ゆえに、この動きは驚きをもって受け止められているという。
担当記者に説明してもらうと、
「そもそも緒方孝市前監督の後任として、球団は野村謙二郎元監督にオファーしていました。しかしそれを野村さんが断ったことでお鉢が回ってきたのが、現監督の佐々岡真司でした。就任当初から契約は1年だったので、『ツナギ』的な役回りだと言われてきたのです」
そして、「佐々岡の次」と言われてきたのが、東出輝裕2軍打撃コーチ(40)だったという。ちなみに緒方は52歳、野村は54歳、佐々岡は53歳になる。
「今シーズンから2軍監督に昇格するはずだったんですが、高信二という1軍ヘッドコーチが戻ってきて再び2軍監督をやることになりまして、ちょっとシナリオが狂ってきているのかなぁと言われるようになったんです。そこであれこれ聞いてみると、”球団からオファーがあった”というのを、金本さん自身が親しい知人に漏らしているという話もでてきました」
別の記者によると、
「そうですね、確かにそんな話を聞いたことがあります。さらに、金本政権誕生時にはヘッドコーチに新井貴浩を招聘し、2年くらい経ったら新井さんに繋ぐという話もあるみたいです。まぁ新井さんはカリスマ性とか人気の面では高いからファンの間では待望論はあると思いますよ」
「監督になってほしい人ランキング」
たとえば広島で、「監督になってほしい人ランキング」についてアンケートを取ったとすると、1位黒田博樹、2位新井貴浩、3位以下は他球団出身の監督経験者があがるという。他方、金本の名は絶対にあがらない。
「黒田には球団はオファーもしないでしょうね。わざわざメジャーから戻ってきてくれただけで十分ですし、監督をやったらその名声にキズがつくこともあるでしょう。新井もいずれはやるんだろうなぁとは見ていますが、采配とか作戦面とかはまるで未知数で、いきなり監督なんてとても無理。だから、とりあえずコーチとして入閣するのは理解できますが……。一方で、金本って地元では”100%監督はない”と言われてきたんですよ。今のオーナーと揉めて阪神に移籍したということだったので、とても意外ですがようやく許されたと見てよいのかもしれません」
意外なポイントは他にもある。広島は巨人同様、「生え抜き愛」が特に強い球団の1つだ。
「1970年代半ばから監督を務めた古葉竹識さん以降、マーティ・ブラウンはともかく、みな広島一筋で現役を終えて監督に就任しています。細かいことを言うと、古葉さんは最後の1年だけ南海で過ごしましたが……。で、金本はと言うと広島を出て阪神に10シーズンも在籍してユニフォームを脱ぎ、その後に阪神の監督までやったわけで、そんな彼にオファーをするというのは、これまでの広島の常識からはあり得ないことなんです」
鈴木誠也の存在
念のため、金本がFA宣言した2002年オフのことを振り返っておくと、金本自身は「後輩のためにも、FAしての残留」を球団に求めていたものの、球団は「マネーゲームになる」とこれを却下。そこにラブコールを送ったのが阪神の星野仙一監督だった。
「佐々岡はどうしても監督をやりたいという思いはないみたいだし、金本と佐々岡はテレビで共演したりもして仲が良い。金本・新井はちゃんと師弟関係がある。佐々岡、金本、新井と繋いでいくこと自体に問題はなさそうです」
冒頭の記者に、今回の広島フロントの「心変わりの背景」について聞いてみると、
「鈴木誠也がいつメジャーに行ってもおかしくないということも大きいのかなぁと思います。ソフトバンクの柳田悠岐が大型契約を球団と更新して大リーグ行きがなくなった今、メジャーが熱視線を送っているのが鈴木でしょう。球団の方も、“マエケン(前田健太)のときもそうだが、“メジャー志向の選手はできる限り応援してあげたい”“本人が『来年行きたいです』と言えば話を聞く”と言っていて、ポスティングによるメジャー挑戦は現実味を帯びている。コロナ禍でメジャー球団の財政が著しく痛んだのは誤算でしたが、それでも良い選手は選ばれる。広島としては、スター選手が流出する危機が差し迫っている中で、過去に遺恨があったのだとしたらそれは水に流し、全国区の知名度を誇る金本の人気にすがってみたいというのは理解できる話ですね」
(※引用元 デイリー新潮)