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黄金時代を知る男・川口氏「優勝を知る河田ヘッドの人間力・野球眼」

2021年5月18日

黄金時代を知る男・川口氏「優勝を知る河田ヘッドの人間力・野球眼」

愛する古巣の苦しい戦いが続く。このコラムを書きながら、横目では西川龍馬の芸術的なタイムリーで引き分けに持ち込んだが、借金4、セ・リーグ4位は変わらない。(16日現在)。まもなく開幕から2ヵ月、ベンチはあの手この手で打開策を模索する。

「攻撃と守備のバランスがよくありませんね。打線も繋がりを欠いています。しかし、打順を組み替えることは悪いことではないと思います。一人一人が、自分の役割をもう一度考えるための刺激にもなりますから。繋ぐためにどうすればいいか。そこを考えると、ちょっと各打者がボール球を振ってしまっている傾向はありますかね」。

理路整然と現状を分析するのは、カープ黄金時代の139勝左腕・川口和久である。2011年からはジャイアンツ一軍投手総合コーチも務めている。原辰徳政権ではリーグ3連覇を経験、あのベンチで川口は野球眼を培った。

「1巡目の攻撃では、相手投手の球をある程度見ていきます。2巡目は、狙い球を絞っていきます。3巡目以降は、チームの方向性の中で攻撃を展開します。原監督は言ったものです。7・8・9回は、ベンチで野球をやらせてもらうと。カープも3連覇のときは、そういった野球をやっていましたよ」。

投手は投げる。野手は、打って、守る。担当コーチは技術指導や作戦面に心を砕く。ならば、この統一方針は、誰がどうやって浸透させるのだろうか。

「珍しく投手と飲みに行きたがる後輩が雄祐でした」

「そこを導いていくために、雄祐(河田ヘッドコーチ)が入ってきたのでしょ。カープのコーチで優勝を経験して、スワローズでは、相手サイドからカープを見てきました。そういうことを選手にメッセージとして伝えてくれるはずだと思います」。

2016年のリーグ優勝では、黒田博樹が、新井貴浩が、石原慶幸が投手と野手を繋いできた。そして、チームには一体感が醸成された。

「そういえば、現役時代、珍しく投手と食事に行きたがる後輩が雄祐(河田ヘッドコーチ)でした。先輩、お願いします。そう言って、よく一緒に行動したものです。本当に可愛い後輩でした」。

その記憶の中に、河田の人間力を見出していた。「彼は、目配りや気配りができます。焼肉では率先して焼き手になり、鍋奉行でもありました。焼き方も上手いし、水割りの作り方も、ちょうど良い加減なのです。食事を美味しく、良い時間にするため、妥協がありませんでした。もちろん、野球についても議論したものです」。

ちなみに、川口は、肉ではミディアムレアを好み、水割りは濃いものを求めるタイプである。情報を頭に入れ、瞬時に判断する。確かに、のちの判断力に通じなくもない気がする。しかも、川口の話術である。論は説得力を増していく。

「肉の焼き加減はその人の心です。どうやったら、相手に美味しく食べてもらえるか。網の上に一定時間肉を置くことと、美味しく役ということは全く別物です」。

そろそろ焼肉から離れてみたい。河田は、1996年、黄金時代のライオンズに移籍している。プロ11年目のことだった。このとき出合ったのが、伝説のサードベースコーチ伊原春樹であった。キャンプでは若手中心の走塁ミーティングがあったが、ここに河田も参加を促された。

「伊原さんと雄祐は凄く似ていると思います」

「打者走者とは」「1塁走者とは」「2塁走者とは」。ホワイトボードを背に、伊原は理路整然と説明を加えた。

「ものすごく新鮮で、もっと早く知っておきたい内容でした。書き留めたノートは、遠征のカバンに入れて何度も見返しました。もう29歳。ノートに書いたことをミスしたら恥ずかしい年齢でした。内容は、基本の徹底でした。これができた上での応用だと感じました」

「実戦で覚える」「野球センス」「意識の問題」。野球界では、このような言葉で済まされることも少なくない。しかし、基本的なことを理論立てて確認する。そのことによって、プレーの精度は高まり、応用も可能となってくるのである。

だからこそ、河田は、基本を何度も選手に説く。「口酸っぱく言うこと。くどくなっても言い続けること。記憶に自信がなければ、ノートに書け。そう言ったこともあります」。

あたりまえの共通認識を、言葉にして徹底する。その認識を共有してこそ、チームは一体となって戦えるのである。

「まさにその通りですよ」。電話口の川口の声が弾んだ。「伊原さんと雄祐(河田ヘッドコーチ)は凄く似ていると思います。三塁コーチでランナーをまわすとき、通常は、さり気なく腕をまわします。あれが同じです。アグレッシブにホームに突入させるときは、腕をダイナミックにまわしますが、通常は、さらりとまわします。あれはね、「これでホームに帰るのはランナーとしてあたりまえだよ」。そんなメッセージだと思います」。

そういえば、2016年、河田が何度も口にしていた言葉が「凡事徹底」だった。誰が呼んだか「明るい小姑」。選手に注意を促す明るい声が、逆襲の上昇気流を生み出すに違いない。そして、新型コロナが収束し、シーズンオフを迎えれば、あの明るい声で「先輩」と語り合うことだろう。もちろん、肉の焼き加減はミディアムレアである。

(※引用元 文春オンライン

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