東京ヤクルトスワローズが6年ぶりの優勝を飾ったプロ野球のセ・リーグ。レギュラーシーズンも残り数試合となる中、熾烈な新人王争いに注目が集まっている。
横浜DeNAの牧秀悟選手はチームの4番に定着し、新人としてリーグ史上最多となるシーズン35二塁打を記録。一方で、広島の栗林良吏投手は抑えとしてここまで防御率0点台と驚異的な成績を残している。史上稀にみるハイレベルな新人王争い。ネットの野球ファンからは2人の「同時受賞」を望む声も聞かれている。
成績の比較対象は「レジェンド」たち
牧選手は20年ドラフト2位で中央大から入団した。今シーズンは開幕戦から出場を重ね、持ち前のバットコントロールと長打力を遺憾なく発揮。2021年8月25日の阪神戦では新人として公式戦史上初となるサイクルヒットを達成した。
シーズン終盤には4番に定着。10月26日のヤクルト戦では長嶋茂雄氏の記録を抜く、リーグ新人シーズン最多二塁打を更新した。ここまでリーグ8位の22本塁打を放ち、打率も.312 (以下、成績は26日終了時点)でリーグ4位。現在トップの広島・鈴木誠也選手とは6厘差で、首位打者の獲得も現実味を帯びる。一年目でシーズン3割、20本塁打を達成すれば、プロ野球では長嶋氏(巨人、58年)、石毛宏典氏(西武、81年)、清原和博氏(西武、86年)といった名選手と並ぶ、4人目の記録となる。
例年なら「新人王当確」ランプが灯っていても不思議ではない牧選手の成績。だが、今年に限ってはそうもいかない。広島・栗林投手も圧倒的な成績を残しているためだ。
栗林投手は20年ドラフト1位でトヨタ自動車から広島に入団。開幕から抑えを任され、6月まで連続22試合無失点の新人記録を樹立した。夏には東京オリンピック野球日本代表に選ばれ、抑えとして史上初の金メダルに貢献。チームに戻った後も安定感は健在で、ここまで51登板、防御率0.72、35セーブの成績を残している。
今季の栗林投手の数字は、過去の「レジェンド守護神」が残したキャリアハイの成績と比べてもそん色がない。例えば、元横浜の「大魔神」佐々木主浩氏が98年に51登板、45セーブ、防御率0.64を記録。また元阪神の藤川球児氏は08年に63登板、38セーブ、防御率0.67を記録している。防御率0点台でシーズンを終えれば、こうしたレジェンドたちと肩を並べることになる。
「どっちが取れんでもおかしい」「投手部門と野手部門作るべき」
プロ野球の新人王(最優秀新人)は、全国の新聞、通信、放送各社で5年以上プロ野球を担当している記者が投票権を持つ。最も票を集めた選手1人が賞を獲得する仕組みだが、過去には「該当者なし」だった年もある。惜しくも新人王を獲得できなかったものの、優秀な成績を残した選手には「新人特別賞」が与えられることがある。
ネット上のプロ野球ファンの間では、牧選手と栗林投手のどちらが新人王にふさわしいか、という論争が連日繰り広げられている。どちらも記録的な成績を残しているとだけあって、どちらか一方が新人王を逃してしまうことに抵抗感を抱くファンも多いようだ。
中には「牧と栗林両方に新人王とか出来ないの」「こんなんどっちが取れんでもおかしいよ」と、特別に「ダブル受賞」を認めてほしいという声も。「投手部門と野手部門作るべき」という意見もあった。
そして、セ・リーグには牧、栗林両選手以外にも優秀な成績を残すルーキーがいる。阪神の佐藤輝明選手は24本塁打と今シーズンの新人の中で最多の本塁打を記録。中野拓夢選手(同阪神)は不動のショートに定着し、盗塁王(30盗塁)の獲得が濃厚だ。また伊藤将司投手(同阪神)は先発投手として10勝、防御率2.44と安定したピッチングを見せ、チームの優勝争いに貢献した。2年目ながら新人王の資格を持つヤクルト・奥川恭伸投手は先発陣の柱として9勝を挙げ、リーグ優勝に導いた。
「新人」たちの目覚ましい活躍に、98年の熾烈なセ・リーグ新人王争いを思い出すという人も。同年は14勝をあげた中日・川上憲伸氏、9勝18セーブの広島・小林幹英氏、打率3割19本の巨人・高橋由伸氏、打率.327の阪神・坪井智哉氏の4人が活躍。最終的には川上氏が新人王を受賞し、残り3人に新人特別賞が与えられた。
今年は誰が新人王を受賞するのか、特別賞は何人出るのか。シーズン終了まで、「新人」たちの活躍から目が離せない。
(※引用元 J-CAST)