オープン戦2試合目となった2月26日の中日戦(北谷)。田中広輔は3回、先頭で鮮やかに右前に運ぶと、第2打席(4回)では痛烈な打球で右翼線に運ぶ適時二塁打。第3打席(5回)の凡退も一塁線への強い打球だった。「積極的にとことん攻めていこうと。そこに関しては良かった」。2安打2打点という結果に、静かにうなずいた。
2016~18年のリーグ3連覇を支えたリードオフマンが、レギュラーの座を手放して久しい。昨季はキャリア最少41試合で、放ったのはわずか8安打。キャンプ中、食事に出掛けた秋山翔吾の言葉に背中を押された。「秋山さんは僕のいいときを周りから見ている。引っ張れる、そこが僕の長所、と。とことん打ってやろうと」。その思い、取り組みが中日戦の3打席に表れていた。
本職の遊撃には小園海斗がいるが、地位が確立されているわけではない。三塁の有力候補の新外国人・デビッドソンも未知数だ。「隙あらばという思いは、もちろんある。内野陣を引っ張っていけるように。先頭に立てるように、もう一回きちんとやりたい」。33歳、まだ老け込むには早い。虎視眈々と、定位置奪取を狙う。
2月25日の巨人戦(那覇)では、公式戦で1試合も経験がない一塁守備にも就いた。自身の置かれた立場は当然、理解している。「僕の野球人生でいい経験。ただ、何くそ、という思いは持ちながら今後に生かしたい」。リーグ優勝の歓喜を味わったメンバーの力は貴重。オフには、球団史上最大1億2000万円ダウンの年俸3000万円で契約を更改した(金額は推定)。崖っぷちから、意地を見せる。(写真=牛島寿人)
(※引用元 週刊ベースボール)